JIA長野県クラブ「代表日誌」 2016年10月

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

JIA長野県クラブ「代表日誌」 2016年10月

JIA長野県クラブ 山口代表より「代表日誌」2016年10月 が届きました。(2016年10月31日)

 

10月1日 

準寒冷地温熱教室第5回「エネルギー性能をデザインする」設備仕様の検討と「シミュレーションを行う」一次エネルギー計算、が行われた。

今回は辻先生のご自宅である「カミノハウス」が紹介された。昭和24年に建てられた木造平屋の住宅を平成20年(2008年)に購入され、最初の改修後もDIYなどで様々な工夫を重ね、まだ完成形ではない中途の報告である。改修前と比べ水を含むエネルギー削減率が77.6%で、月間電気使用量は64kwhだそうで、わが事務所兼住宅の1/10以下だ!!

本編はいよいよエネルギー性能について。一次エネルギーと二次エネルギー、エネルギーと燃費の計算を行いどのようにエネルギー削減を行うか考察した。家電・給湯エネルギーとカーテン・換気・着衣量などの住まい方の工夫も考慮し、目標値と設計値の計算の考え方を学ぶ。後段は消費性能計算プログラム(建築研究所)の解説が行われた。

温熱教室もあと1回を残すのみである。新井委員長からはカッコイイ修了証の文言を考えるようにとの依頼があった。なかなか難しい要求である・・・。

 

慶野副支部長から、本部教育・表彰委員会内に設置されるCPD-WGの委員派遣の要請があり、当会として丸山監査にご了承いただいた。継続研修制度であるCPDの、特に地方在住会員の単位取得機会の均等化と有効で質の高い単位化に向けてのシステムやコンテンツの検討を行うワーキングだそうだ。当会の知恵を貸して欲しいということであろうが、丸山さんが最適と考えた。CPDの年間取得単位数は昨年10月から12に削減(従来は36単位)されており、個人的にはミッション化するほどのテーマだろうかと疑問に思う。

 

10月3日 

新潟地域会代表の小川さんから連絡がきた。2月25、26日に開催される建築祭の日程の確認で、同じ日程で新潟の卒業設計展の選考会が行われるそうだ。事業委員会では今年度から審査員の削減を検討中で、北村委員長に確認したところ今まで群馬・山梨・新潟各地域会から1名、計3名派遣していただいていたのを1名とし、今年度は群馬地域会にお願いする予定とのことであった。小川さんは大学が同期で研究室も一緒だった。今年が代表として最後になる可能性もあるようなので、3月のコンクールには私が行こうかと考えている。

 

10月8日 

JIAとは全く関係のない個人的なことがらだが、オーディオのことを書かせていただく。

自分で言うのも何だが、私は偏屈なオーディオ・マニアである。いつもお世話になっているお店に真空管のパワーアンプの修理とモノラル、ステレオ用それぞれのカートリッジの針交換を今日依頼した。オーディオ・マニアといっても、私の場合オーディオが好きというより、愛して止まないSOULとBLUESをいかに良い音で聴くかというのがテーマである。アナログ盤はLPよりも45回転のシングル盤(昔風に言えばドーナツ盤)が主体でプラスアルファでたまにCDを聴くというスタイルで、そのシングル盤を最高の音で聴きたいという願望に取り憑かれた-言わば一種の変態です。今日のところはシステムの紹介までに留めたい、音楽の話を持ち出すと恐らくエンドレスになってしまうから。

現在2系統のシステムを所有しており、1つはモノラル録音のシングル盤用と、もう1つはステレオ録音のシングル盤+LP+CD用である。なお、ステレオ用システムで聴くモノラル盤も別の趣があって素晴らしい。

  1. モノラル用:アナログプレーヤーはGarrard 301とSMEのトーンアームにOrtofonのモノラル用カートリッジ。アンプは共にMcIntoshの真空管でプリ・アンプはC22、パワー・アンプは130WのMC2000。スピーカーはALTECの同軸2ウェイの604-8Kのユニットを使ったMilestone 604というラインアップである。
  2. ステレオ用:アナログプレーヤーはEMT938でカートリッジは当然TSD-15、CDプレーヤーは共にEsotericのトランスポートがP-0SvでDAコンバーターがD-03。アンプはやはり共にMcIntoshのトランジスタでプリがC46、パワーがステレオの500WのMC500を2台繋いでいる。スピーカーは最高と信じて疑わないTANNOYのオートグラフ・ミレニアムである。
  3. スピーカーの感度は共に100Wかそれ以上、38cmウーファーに中高域はホーン(コンプレッションドライバー)で、ヴォーカルの周波数帯域である中域をいかに魅力的に鳴らすかがテーマである。

2ヶ月後に戻ってくるアンプとカートリッジで訪れるであろう至福の時間をひたすら待つことにしたい。

 

10月9日 

文京地域会代表の野生司さんの追分の山荘を訪問する。8月5日の千代田地域会の軽井沢での例会でご一緒したが、その時は席が離れていてお話しできなかった。今日は久々にいろいろなお話をさせていただいたが、特に今話題の豊洲市場の建築の問題と新国立競技場の話が大変興味深かった。

 

10月12日 

JIAが今年度出版する「信州の建築家とつくる家」への掲載の許可を貰うべく、引き渡して半年が経過した「野沢田町の家」を訪問する。早いもので、ご主人が逝去されて1年以上が経ち、新しい場所での生活にもようやく慣れてきた印象であった。これから訪れる厳しい冬を快適に過ごしていただきたいと願っている。

 

10月16日 

「信州の建築家とつくる家」の原稿の作成と提出物をまとめる。

 

10月18日 

今回の「信州の建築家とつくる家」の編集・出版をお願いしたデザイン・コミュニケーターの飯田さんのヒヤリングに参加する。今までは参加費と原稿の締切をなかなか守っていただけないという難題があったようだが、今回はとても順調にいっているようだ。改めて広報委員会のご努力に敬意を表します。吉田委員長・荒井副委員長・山田委員は2日間会場に詰めていらっしゃった。ご苦労様でした。

一人15分の持ち時間で、その場で初めて見たデータから的確な質問を繰り出す飯田さんを見ていて、建築雑誌の編集者としての建築に対する知識と洞察力と共にプロの編集者の凄みを感じた。順調な滑り出しですが、引き続きご協力いただけますようお願い申し上げます。

 

10月19日 

第5回 JIA災害対策会議兼災害対策本部:熊本地震に於けるJIAの被災度認定の2次調査はまだ続いている。嘉島町・御船町・大津町3町で現在まで延べ360人(内全国支部73人)の調査員が派遣され、3次調査も含め残りが250棟ほどあり12月まで予定が組まれている。すでに5ヶ月近い活動で支部会員も疲弊しており、全国の支部に追加の支援要請があった。嘉島町での11月14〜17日、24・25日、計6日で12名、的確な調査をする意味から今回の経験者に絞った要請である。今週中に各支部長宛に要請文が出され、支部では来週早々にも各地域会に届く予定だ。73人は延べ人数なので重複を除いた実質の人数は不明だが、関東甲信越支部からは当会も含め10人ほどが該当すると思われる。1人2日として6名の派遣になりそうである。

 

10月21日 

災害対策本部:本日午後2時過ぎ鳥取県中部を震源とするマグニチュード6.6、最大震度6弱の地震が発生した。午後5時30分対策本部会議が招集され、六鹿本部長、岡部副本部長、現地災害対策本部長に龜谷中国支部長が就任した。場合によっては19日に九州支部から支援要請のあった嘉島町への追加の調査員派遣にも影響が及びそうだ。

 

建築家通信111号:百瀬副委員長から第1校が届く。表面は降幡廣信先生に原稿をお願いした。村松貞次郎先生に励まされてから人生が変わった経緯を綴った、降幡先生の気さくなお人柄が表れた素晴らしい文章です、皆さんお楽しみに。裏面は「湯田中街並み整備プロジェクト」に関わっていただいた広瀬さんと下崎さんの報告である。予算が非常に厳しく困難を伴ったプロジェクトであったがお二人の奮闘に感謝したい。

 

野口・藤松・荒井氏協同設計の「山の子保育園」が日事連の優秀建築賞を受賞された。お三方の名誉であるとともに当会の名誉であるとも感じています。おめでとうございました。

また、建設部で行った「“信州の木”建築賞」で最優秀賞に(有)みすず設計のねばねの里「なごみ」が、優秀賞に(株)宮本忠長建築設計事務所の軽井沢発地市場が受賞されました。おめでとうございます。なお審査員には当会から新井優さんが参加しています。11月21日(月)には表彰式が行われます。

 

10月25日 

災害時の住宅相談に関する県との協定について:2月に県の建築住宅課の要請で会議が持たれた表題の件で建築士会の場々会長から連絡があった。応急危険度判定は建築士会と長野県で協定を結んでいるが、それを災害直後の住宅相談に関しても関連団体と協定を結んだらどうかというのが県の意向だ。神城断層地震で災害支援にあたったJIA他全5団体に声がかかり、建築士事務所協会を幹事として会議が持たれたが、その後宙に浮いた状態であった。応急危険度判定同様にボランティアで行うことになりそうだが、協定書を見ていない状態では断定はできない。熊本地震では被災度認定の2次調査でさえ無報酬が求められる傾向があったようだが、果たしてそれで本当にやって行けるのか疑問に思うところもある。「住宅相談」と一口に言っても、震災直後とそれ以降と明確に分けられる訳ではないので難しい問題をはらんでいるような気がする。

 

事業検討WG:冬のセミナーの参加予定者は会議の開催前には24名だったが、その場での電話攻勢で募集定員の30人名に達した。こういう時のみなさんの行動力は流石です!

その後時間配分を含めた細部を詰めた。参加費はバスの中で徴収し、飲み物はアルコールも持ち込むことに。

また最終回を残している温熱教室について、修了証のサンプルの検討と当日の内容の確認を行い、今年の6回のセミナーと来年度以降の事業について意見交換した。参加者へのアンケートも実施する予定なので、この事業の総括は終了後行うことになるが、来年度も1ヶ月置きに計3回程度のセミナーは行った方がよいという意見が多かった。

 

10月27日 

建築家大会2016大阪 第1日目:初めに午後1時からの全国地域会長会議に参加する。今年は2部構成で、第1部は準会員の活動を活発に行っている北陸、九州、沖縄支部の報告。石川・富山両地域会で40名以上の準会員がおり、準会員だけの事業が行われているとのことであった。

第2部は公益事業の取組について神奈川、滋賀、奈良、兵庫の各地域会からの報告。行政と連携した公共建築や景観整備、まちづくり、防災関連事業の活動報告が行われた。

 

続いてシンポジウム1 「文化都市の復権〜大阪から全国へ〜」に参加する。パネラーは上方芸能評論家の木津川計氏と建築家の香山先生、ファシリテーターに大阪市立大学の建築史の倉方准教授で行われた。木津川氏は大阪の現状を文化としての都市格の低下と経済としての都市力が衰弱している、大阪はなぜ転落するのかをユーモアたっぷりにお話しされた。香山先生は社会の均質化と向きあう建築の役割〜都市の個性は回復できるか〜というテーマで、分化ではなく複合化、規格化ではなく個別化、継承とローカルという視点が都市の多様化には必要で、ひとつの建築で社会を変えることはできないが1つ1つの建築にできる小さなことはあり、その積み重ねがゆっくりと均質化された現代の社会を変えることにつながるのではないか、というお話であった。これを受けて倉方氏は東京に育った人間として文化的視点から大阪の豊かな歴史にどう向き合うかというお話をされた。大阪で生まれ育った木津川氏は卑下し、東京で育ったお二人が大阪を持ち上げるというような構図であったが、木津川氏が大阪を深く愛し、現状を憂慮されているのが印象的であった。

会場となった本町の綿業会館は1931年竣工の渡辺節設計の建築で、2003年に重要文化財に、2007年に近代化産業遺産に認定されている。木津川氏は戦後多くの貴重な建築が次々と壊されたと嘆いていらっしゃったが、2日目のメイン会場である中之島の大阪市中央公会堂も含め歴史的建造物も数多く残されている。

 

ウェルカムパーティーは一時東洋一のキャバレーと呼ばれた(らしい)味園ユニバースで行われ、来年の開催地である四国支部有志によるバンド演奏と唄でオープンした。隅々まで細かな配慮が行き届いた大阪大会の初日を充分に堪能させていただいた。

 

10月28日 

建築家大会2016大阪 第2日目:今日は1日を通して、辰野金吾・片岡安設計で1918年に竣工した大阪市中央公会堂を会場に行われた。

「ストック活用を環境・保全・災害・まちづくりの視点で考える」セミナーに初めの1時間だけ参加し、本部災害対策会議の委員として「フォーラム 大震災:阪神淡路・東日本から熊本まで」の準備に向かう。私は裏方だったので全て把握しているわけではないが、阪神淡路と南海トラフの防災対策については大阪府災害対策室の田中課長が、東日本大震災は東北支部から手島氏が地域復興支援について、芳賀沼氏が仮設から復興住宅について、松本氏が被災住宅カルテの作成を通じて迅速な住まい再建を建築家が担う必要性をお話しされた。熊本は水野災害対策委員長と原田熊本地域会長による被災者と復興支援の現状報告と問題点が報告された。

9月2日の支部のシンポでも報告したが、とかく災害直後の支援活動ばかりに目が向きがちだが、建築家として本領が発揮されるべきは災害後の生活も含めた長い復興支援に関してだろう。それは非常に困難を伴うものだが、5年以上に渡って実践されている東北支部の皆様には本当に頭が下がる思いである。

 

2時から大会式典が行われた後、「シンポジウム2  ソーシャルイノベーターとしての建築家」が行われた。他人任せではなく自らの力で明るい未来を築こうという動きがあり、それが「ソーシャルデザイン」という考え方であり、その担い手を「ソーシャルイノベーター」というのだそうだ。モデレーターとしてソーシャルデザインに関わって来た兼松佳宏氏を迎え、大阪で活動している2名の方と吉村大阪市長が報告を行い、後半は建築家として伊東豊雄、工藤和美、竹原義二の3氏が加わった。実践者としてのお二人はそれぞれ知的障害者と路上生活者が社会に参加できる仕組みを作り活動できる場を広げようとしている。吉村市長は行政として従来の枠に留まらない新たな視点での取組について話された。兼松氏は建築界の重鎮に対してこのような新たな社会的な試みの場に引き込んで、望まれる社会の変革と建築家の職能を議論する見事な調整役を果たしていた。最初は唐突と思われたテーマ設定であったが、建築家は「ソーシャルイノベーター」であるべきという結論に素直に納得できる貴重なシンポとなった。

レセプションパーティーは会場をザ・リッツ・カールトンに移して盛大に行われた。その後山下設計関西支社設計部長の河野さんの案内で藤沼支部長以下関東甲信越支部のメンバー数人と2次会に参加、今日はそこでお開きとなった。

 

10月29日 

建築家大会2016大阪 第3日目:「シンポジウム3  生きる街〜市民が担うまちづくり〜」豪商・鴻池本家跡地である大阪美術倶楽部を会場に開催された。古谷誠章氏を含む多彩なパネラーが自身のキャリアと共に市民が担うまちづくりを語り、第2部で落語家・桂歌之助氏が三題噺に挑み、第1部で唱えられたキーワードを繋げて1つのショート(笑都)ストーリーを仕立て上げるという大阪ならではの粋な構成とプロの噺家の力量に唸った楽しい時間となった。

その後趣味を通じての旧友を訪ね、ひと時の音楽談義に花を咲かせた後、後ろ髪を引かれる思いで大阪をあとにした。ちなみに、長野県クラブから今回の全国大会に参加したのは私一人という寂しい状況であった。来年は9月28日〜30日に徳島市で開催されます。みなさんもこれを機会に四国に行ってみませんか?

 

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