建築家資格制度のオープン化についての会員集会報告

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

建築家資格制度のオープン化についての会員集会報告

「建築家資格制度のオープン化についての会員集会報告」(2009.06.24) 赤羽吉人
<「建築士」は「建築家」になれるのか? >

 

「建築士」は「建築家」になれるのか?・・・・・をキャッチコピーに長野地域会では5月9日、建築家資格制度のオープン化をテーマとする会員集会を開催しました。

 

3月初旬の関東甲信越支部役員会の議案としてこの問題が取り上げられ、その後各地域会の意見集約を求められたことに対応するためです。4月上旬に総務委員会、幹事会での討議を経てはいましたが、会員集会で扱うべき重みのある問題として取り上げることにしたものです。

 

非常に難解なテーマであり地域会レベルでの意見集約を行うには参加会員が問題の背景やこれまでの経緯を正確に把握し理解していることが重要であり、当日の限られた時間の中でそれらを十分に説明することは時間的に難しいのではないかと考えていましたので、支部からの配付資料に問題点を要約したレジュメを付けて全会員に事前に情報提供し、問題点把握を呼びかけました。当日参加した会員の反応を見る限り、こういった事前の情報提供は無駄ではなかったとの印象を持っています。

 

問題点を正確に理解するために支部から伊平支部長と上浪副支部長の参加を求め、背景説明を主眼とする第1部の勉強会での話題提供をお願いしました。支部長は、建築基本法・建築家資格制度・設計者選定法の3本柱の立法措置と現行法体系の抜本的改定を表裏一体の施策として推進することが、結果として設計業務環境改善と建築家職能確立に繋がるとの大原則を提言として示しました。副支部長は、これらの問題解決にとってUIA東京大会の開催は絶好の好機と捉えるべきとの立場でUIA東京大会の意義と準備状況を説明しました。

 

第2部は座談会形式のフリートークとしました。発言者は伊平則夫、上浪寛、赤羽吉人(長野)、出澤潔(長野)の計4名、司会は久保隆夫(長野)(各々敬称略)です。

 

<赤羽:これまでの経緯説明と会員集会の主旨>

・昨年の2度の総会決議で建築家資格制度のオープン化を目指すことが承認された。

・その際の条件であったはずの専兼区別の撤廃と第3者機関による審査・認定という2大要素が本部実務委員会案で変更されており、会員への事前説明も行われていない。

・出江会長の説明文(「お願い文」)では、専兼区別のない形での登録建築家制度のオープン化は建築士会の専攻建築士制度と紛らわしいとの理由で建築士会が反対するから、JIAとしては建築士会の賛成する形でオープン化すべきとしている。

・私はこの実務委員会の方針転換は看過できないと考えている。理由は以下の通り、JIAとしての歴史的経緯による基本方針と矛盾すること、建築士会の真意が不明であること、他会と協力するためにはJIAとしての揺るぎない方針を維持する必要があること、等である。

・以上を踏まえ、JIA長野県クラブ会員の間で自らの問題としてこの問題を真剣に討議して頂きたいと思い、意見交換の場を用意した。まずは発言者各々にコメントをお願いしたい。

 

<伊平:建築家資格が必要な理由は? 推進する施策は?>

・法的に資格の位置づけがないと、建築家も技術者も能力を発揮できない。また社会も信頼しない。

・設計施工(兼業)と専業の両方を整合させた資格制度として、業態でなく専門家の力量で仕事ができる環境が必要。そのためには、資格では専兼の垣根を取り払うことと、最終的に建築士法の改正で建築家と技術者の明快な資格認定制度の確立を目指している。それらを包括する理念法としての建築基本法の制定がまず求められる。

・30万人といわれる一級建築士のうち専ら設計に従事しているといわれる5万人について、全員の倫理性遵守と力量アップが求められる。

・2002年の建築士会・建築家協会2会合意に基づくオープン化を目指すべきで、オープン化後には建築家資格制度の認定基準と目的が同等であれば、JIAの登録建築家制度は一本化されて解消してかまわない。日本の国家資格を目指してJIAからオープン化しなければならない。

・本部実務委員会の考え方は純粋な面もあるが、日本の建設産業構造の中で早急に資格制度を確立しなければならないという大局が見えていないのではないかと懸念される。

・建築基本法は国交省に任せきりにせず、議員立法も視野に入れて施策を練る必要がある。

・建築とまちづくりは、国交省他の省庁、国民、様々な専門家に責務のある課題である。

 

<上浪:UIAアコードで兼業事務所に所属する建築家はどう扱われるのか?>

・UIA Accord(建築実務におけるプロフェッショナリズムの国際推奨基準に関するUIA協定)では冒頭の「プロフェッショナリズムの原則」において、次の4原則を掲げている。
[ 専門性(Expertise)、自立性(Autonomy)、委任(Commitment)、責任(Accountability) ]

・「施策事項」の「業務の形態(Form of Practice)」の中で「UIAは必要に応じ、代替的な業務形態や異なる地域的条件を考慮して、施策や基準を考案・修正する。」と規定されており、地域要件を反映させた柔軟な施策が可能であるとの立場を明示している。

・「倫理及び行動に関する協定政策に対する推奨ガイドライン」の「原則3:依頼主への義務」の中で3.8 基準:「建築家は、利害の衝突をうむと解釈されるかもしれない重要な状況を知った場合は、それを依頼主、オーナーあるいはコントラクターに開示する。また、利益の衝突が、関係する人々の正当な利益を危うくするものではないということ、あるいは、他の人による契約遂行について公平な判断を提供するという建築家の義務を阻害しないことを、保証しなければならない。」と規定しており、利害の衝突(Conflict of Interest)に関する開示を義務づけている。

・AIAでは1987年に、RIBAでは1989年に各々、利害の衝突排除の原則から利害の衝突開示の原則へと方針転換しており、UIAでも2004年に倫理綱領から禁止条項(第8条:アーキテクトの利益追求ビジネスへの参加を禁止する条項)が削除され、利害の衝突排除原則から開示原則に方針転換した。

・AIA日本支部であるAIA-Japan会員並びにAPEC-architect資格者には数多くのゼネコン設計部に所属する建築士が登録されている現状を見る限り、UIAアコード上で日本での兼業設計事務所に所属する建築家を排除する運用形態は想定できないといえる。

 

<出澤:建築士会の立場を踏まえて発言して頂きました>

・専攻建築士制度は、建築士会が建築士の専門性を認定し、公表して社会に対して責任を明確にする制度である。改正士法により中央指定登録機関の指定を受け、より公益的な団体となったことと、公益法人改革の趣旨に合わせた活動を推進して社会に開かれた制度の拡大を目指すためにオープン化が必要。

・出江会長の「お願い文」中の建築士連合会の主張は現段階では理解できない。あらためて確認すべき内容だと考える。

・UIAアコードはプロフェッショナルとして当然守るべき基準であって、本来柔軟に運用されるべきものだから、日本の事情を考慮する事は当然のことである。

・建築生産の場をオープンにして、一級建築士資格を建築生産の場のそれぞれの専門資格として明確に位置づける必要がある。

・建築士と建築家に「建築に対する心」の違いはないと考えているし、そう考えたい。

・資格制度の問題と設計業務発注の問題を同じ場で議論する事も現実的な問題として必要。

・いずれにしても、この問題は建築生産の場の基本的な問題として捉えるべきである。

 

<赤羽>

・建築士法の再改正が必要という点と、一級建築士資格を共通の技術資格として位置づけるという点について異論はない。

・JIAの目指すUIA基準に準拠した建築家資格制度と建築士会の専攻建築士制度とを同列に論ずることには無理があると思われる。それぞれの目指すところは異なっているのではないか。

 

<出澤>

・全ての国民に良質な建築を提供するためには、建築生産に関わる専門分野の様々な資格者が必要であると考えている。

・そのためには現在の建築士資格を建築生産に関わる基本的資格と位置づけた上で建築生産に関わる様々な分野の資格を別に設け、資格制度の一元化を図る事が現実を一歩進める具体的な手段であると考えている。

・混乱している建築生産の場の資格制度を国民から見て判りやすくする事こそが私達の社会に対する責任でもあり、市民サービスであることを私達は理解しなければならないと思っている。

 

<伊平>

・現行建築基準法では、設計する建築士に裁量の余地を与えず、設計基準の細部までがんじがらめに規制しているため、建築士が設計内容に対する独自性を発揮できる範囲が非常に限られているという点を強調しておきたい。

・こんな不幸不毛な状況を解消し、設計者が社会から信頼されて仕事を任される環境を作らなければ根本的な解決策にはならないのであって、そのためにこそ建築基本法の制定の下で、建築基準法の簡素化と建築士法の改正による建築家資格制度の確立が必要なのである。

 

以下、会場内参加者からの意見を紹介します。

<長井淳一(群馬地域会より参加)>

・JIA会員として問題意識を共有して行くことが大切だと思う。

<須田睿一(群馬地域会より参加)>

・JIA内部でこういった話をすることと平行して、会の外部に向けた職能教育、特に子供達や一般の人達に対し建築家の役割を理解してもらう教育が必要であると痛感している。

<西沢利一>

・国家資格を目指すのだからオープン化は当たり前のことであって、その流れは当然といえる。

<川上恵一>

・この集会に参加してようやく資格制度のオープン化の意味が理解でき始めている。

<倉橋英太郎>

・JIA軽井沢大会での基本方針変更は悪夢を見る思いだった。JIA会員としては専兼の枠を取り払う制度など想定したくないという気持ちが強い。
(この意見に対して、以下の発言があった。)
<伊平>

・今論議している建築家資格制度はJIAだけのものではなく、設計に従事するもの全体の資格制度でなくてはならない点を理解してほしい。そのことと専業建築家の集まりとしてのJIAの存立基盤とは別次元の問題である。

<西川直子(建築ジャーナル)>

・建築基本法にしろ建築家資格制度にしろ、国交省任せにすれば、建築基準法、建築士法の二の舞になりかねない。油断せずにしっかり監視することが必要。

 

以上、各氏の発言を要約して紹介しました。結論としての一つの方向性にはたどり着けませんでしたが、私達が建築家としての活動を続ける上で、国家資格としての建築家資格制度が如何に重要な問題であるかについて、多くの会員が認識を深めることができたと考えています。
群馬地域会からも4名参加頂きました。群馬で同様の意見交換会を開く際の参考例として役立ててもらえれば幸いです。

 

 

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