JIA長野県クラブ「代表日誌」2022年2月

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

JIA長野県クラブ「代表日誌」2022年2月

JIA長野県クラブ 新井 優 代表より「代表日誌」が届きました。(2022年3月8日)

 

 季節は一気に春直前の風を感じる日々になってきました。今年は例年になく寒い冬で、自分自身も毎週の木曽林業大学校男子寮棟の現場通いでは特に身にしみる寒さの冬でした。

 

さて、懸案の2月26日(土)〜2月27(日)に計画していた『ひと、まち、建築 みつめようくらしの場 2022 第16回建築祭』ですが、轟委員長率いる事業委員会の綿密な計画により、予定通り無事に行うことが出来ました。

 

コロナ禍の蔓延防止期間中でもあり、一般の皆さんの参加は文化講演会のみとし、学生卒業設計展とギャラリートークは取りやめ、学生卒業設計コンクールも一般者の入場は控えていただきました。講演をお願いした宮崎浩先生には当初より『絶対松本に行きます』との心強いお言葉を頂き、迷わず計画を進めることが出来ました。

 

26日の第30回 文化講演会は、宮崎浩先生による『つながる美術館、長野県立美術館の現場から』講演内容は報告記事に任せますが、JIA長野県クラブで昨年行った長野県立美術館見学会において、大変お忙しい中で説明にお越し頂いた時の、建築家として近寄りがたい厳しいオーラを醸し出していた印象とは打って変わり、真摯に優しく美術館への思いを語る姿を感じさせて頂きました。

 

特に現場の段階から『つながる』事を大切に施工者の力を合わせ、完成した建築自体も街や人をつなげていく美術館として多くの人々が訪れる人気スポットになっています。

 

 

講演会後には宮崎先生を囲んで慰労会(懇親会)を開催。コロナ対策として距離を広く取り、仕切りや黙食と決まりの多い慰労会でしたが、林副代表の名司会で全員にスピーチをお願いするなど楽しい交流の場となりました。

 

翌27日 本題の第31回 長野県学生卒業設計コンクールは、このような社会情勢の為一部の高校の参加辞退は残念でしたが、高校生の部10作品、専門学校の部10作品、大学の部は9作品の参加を頂き、その内容もますます向上し充実したコンクールとなりました。

 

特に高校生の造形力の向上が顕著で感銘を受けた作品が多く出品されました。

高校の部、金賞の山川維謙さん(長野工業高校)の作品『知・職・住 〜起業家が住まう場の提案〜』は、都市の狭間に立つ複合ビルを三つのボリュームに分け、その隙間から光と風を通しそれぞれの機能を持たせた秀逸な提案です。

 

 

専門学校の部、金賞の中島一平君(上田情報ビジネス専門学校)の作品『ビッグ・シェル』は、北向き斜面に建つアウトドア・キャンプ場のメイン施設。地形を活かし地元の木材の使用や自然共生の仕組みの提案等よく練りこんだ案です。それらに加え、砦のような外観と板張りの雰囲気を醸し出した模型の質感等、建築とはやっぱり指先で生み出していくものだと、改めて感じさせてくれました。

 

 

大学の部、金賞の南雲裕太君(信州大学)の作品『多磨Forest Side Cemetery』は、郊外に追いやられた墓所がスプロール化して再び住宅地に取り込まれた現状を憂い、現代の人々の暮らしと先祖の眠る墓の関係を、彼独自の考え方でその意味を新たな視点で再構築した提案。

 

漏斗型の樹木葬ユニットの隙間に生み出された内部空間は、柔らかい光が差し込むゴシック教会の様な壮大な空間が内包されていた。審査員からも、これまで誰も見たことも無い空間提案が抜きん出ているとの高評価でした。

 

 

本年度は南雲君の作品が長野県代表としてJIA全国学生卒業設計コンクールへと進んでいきますが、三つの注文をおこがましいのですが、JIA長野県クラブ代表としてお願いしました。

1、部分拡大模型も製作して全国コンクールへ提出。

2、平面パネルも3Dプロモーションビデオ級のインパクトのある内容とされたい。

3、プレゼンは原稿を見ないで、審査員の目を見てはっきりと説明してほしい。

 

以下のQRコードから審査員の度肝を抜いた南雲君のプロモーションビデオを是非ごらんください。

 

 

今後の建築の提案力はこの様に進化していくのかとすっかり感心しました。長野県の高い建築文化を証明するため、南雲君には是非頑張っていただきたい。

 

金賞のみ紹介させていただいたが、受賞した作品はもちろん賞を逃した作品についても、たまたま本日の審査の方向性においての結果であり、長い将来においての通過点に過ぎない。むしろ受賞を逃した人の方が将来伸びていく素地があるので、受賞者も含めて今後も切磋琢磨を続けていく様にと、暖かい言葉を各審査員から頂きました。

 

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さて、建築祭の記憶も冷めやらない中、3月4日には当会の副代表も務められた正会員建築家の依田政司さんの訃報が届きました。

昨年のJIA長野県クラブ総会に電話で出席をお願いしたおり、元気そうな声を聞いたままになっていました。コロナ禍で全く会えない中での突然の訃報で本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。依田さん、大変お世話になりました。いつまでもJIA長野県クラブを見守りください。合掌

 

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さて、JIA長野県クラブ最大の行事でもある建築祭も多くの会員のご協力によって進めることができましたが、コロナ禍のせいで二年続けての一般公開無しでの運営を余儀なくされました。しかしWeb方式や、例年とは違う進行に知恵を出し合う等、実際に会えない状況を乗り越える活動に昇華できたと自画自賛しています。

 

この場を借りて、長野県卒業設計コンクールの審査員長 宮崎浩先生はじめ、審査員をお引き受け下さいました(公社)長野県建築士会 荻原白 会長、JIA関東甲信越支部 慶野正司 支部長、JIA山梨地域会 奥村一利 代表にお礼申し上げます。

関係者の皆さんも大変ご苦労様でした。ありがとうございました。

 

 

 

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