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法改正に思うこと

「法改正に思うこと」(2007.06.15) 山口康憲(アーバー建築事務所)

 

今月20日施行の改正基準法・士法の講習会が2回に分けて行われ、当会員の皆さんも多くの方が参加されたことと思います。今回の改正は確認・検査の厳格化等主に実務的な分野に関するもので、資格制度などの建築生産システムの根幹に関わる問題は来年の12月までに改正されます。しかし、今回の法改正で看過できない問題が含まれていると思いますので、個人的な感想を述べさせていただきます。

 

1. 地耐力の問題 地震時に建物に及ぼす影響で最も大きいのは地盤の強度です。現在の耐震基準に照らして半分以下(場合によっては筋違ゼロ)の建物でも地盤が強固なら震度6程度の地震でも問題がなかった事例は、JIAで先月住宅相談に協力した能登でも中越地震でも多く見てきました。構造計算書偽装問題では一貫して地盤に関して触れません。姉歯物件では地耐力を検討した上で解体したのでしょうか?

 

2. 責任の厳格化と情報の開示 講習会では申請の厳格化について、”「建築士」をプロと認めた上で、法に適合しているとの前提で審査する”という説明でしたが、言葉とは裏腹に「性悪説」に基づいての法改正であることは明白です。施行規則第1条の3で情報は開示するということですが、担当者によって解釈が違うこともある複雑な建築の基準を網羅できる筈がありません。資格者の責任の厳格化は本来権限の強化とセットであるべきと考えますが、権限は無く、信用されてもいないのに責任だけは極端に重いというのでは、「やってられない」としか言い様がありません。

 

3. 建築の持つ多様性・柔軟性の無視 工場で大量生産できる工業製品と違い、全く同じものはありえない(すくなくとも”重要な”敷地は違う)一品生産の建築は計画段階で100%クライアントの意向を反映させることは不可能でしょう。何故なら、クライアントでさえ建物の概要を決めてからでないと決定できない重要な要素が多々あるからです。

 

今回の改正で計画変更は難しくなると思われますが、そのことによる社会的コストを無視しています。また2.にも関係し、すでに始まっていることでもありますが、建築の構造の自由度が大きく制限されるのではないかということに重大な危機感を覚えます。

 

構造設計者の裁量に任されていた部分を規定化しその項目で審査するということのようですが、極端なことを言えば100人が100人共認めるような単純な構造しか認められなくなる可能性があるし、規定化による弊害-例えば規定化された事項のみ満たせば良いという設計行為の横行-も心配されます。

 

この他にも触れたいことはありますが、いずれ今後決まるであろう法改正の第2段(これこそが重要!)によって今回の改正(改悪?)の実効性も担保さるのです。その意味で、まだ全てが決定された訳ではないのでJIAは粘り強く理想の資格制度を訴えて行くべきだと思います。

 

7月21日(土)の研修会では、この問題をテーマに本会の役員の講演を予定していますので、多くの参加を期待しています。 最後に蛇足ですが、上記に揚げた3点に通底する共通項は何だと思いますか?それは、「今までも、そしてこれからも世の中の制度を決め、運営する人達がいかに責任を取らないようにするか」でしょう。

 

 

     2020/09/10  事務局ブログ, 建築家のひとりごと

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