藤森建築(小泊Fuji・五庵)見学会 開催しました
2023年08月18日
JIA長野県クラブ 正会員建築家 吉川一久さんより『藤森建築(小泊Fuji・五庵)見学会』の報告です。(2023年8月2日)
正会員建築家8名、個人協力会員1名、所員、他7名 計16名が参加しました。
【小泊Fuji】
東に八ヶ岳西に甲斐駒ケ岳を望み、正面には切り通しの間から富士山が見える。
棚田の様に連なる水田を見渡す丘の上には大きな桜の木があります。
桜の時期には近くの田んぼに水を張って映し鏡にしてくれる。田植えの際には田の神様にお酒をあげて田植えをする。そんな日本昔ばなしに出てくる様なゆったりとした時間が流れている場所です。
そんな場所にふさわしい藤森建築が完成しました。
富士山と桜の軸線上の丘の中腹に、先端が土手から迫り出し背面は土手にめり込んだ形の縦長の船の様な建築です。屋根の上には桜の木を植えました。
施主の山越典子さんは藤森先生に建築を依頼したくて追っかけ13年にして夢が叶いました。ご主人は藤森建築を建てるために大工になりました。(藤森旅館へつづく道で検索すると物語がわかります)
藤森先生のスケッチを見せていただいたのは2021年の暮、先生と一緒に山越さんの家に伺い、初めてのプレゼの時でした。山越さんの感激した顔は忘れられません。若干の間取り修正等はありましたがスケッチに近い形で完成しました。
2022年9月に地鎮祭を行い工期約10ヶ月でした。実施設計から監理までお手伝いさせていただきました。
藤森先生には事あるごとに、いろんな場面でお越しいただき指示してもらいました。藤森建築は現場主義ですから現場を見ながら変わっていきます。
「ここの納まりはそう来たか」というのがとても楽しい現場でした。
藤森建築の封じ手はツルツル、ピカピカ、ピンカドです。
仕上げのほとんどが施主直営工事で行われました。屋根の銅板折り曲げ加工や外壁の焼杉、内部の漆喰もワークショップで行い、家具屋・鍛冶屋・革・石積み等多くの職人が繋がり手作りで出来た建築です。機会があったら泊まってみてください。
【五庵】
オリンピック競技場側に口を開け噛みつく様に建っていた施設を藤森先生の実家近くに再建した作品です。
元は腰部分が袴の様な形で芝で植栽されていましたが高部では大きな石の上に柱を立て乗っています。
工事は藤森照信、川本家具製作研究所(藤森先生の生徒)、立石工務店(藤森先生の同級生)、山越一範(小泊Fuji)と私がちょっとお手伝いしました。
柱の上の構造は床、壁、屋根全てJパネルです。家具屋さんの精度で組み上げられています。
これは藤森先生の芸術作品、オブジェです。土地は元水田です遠くから見ると田の神様のお住まいに見えてきませんか。
藤森先生は遠くの方から建築を見つめている様な気がします。