JIA長野県クラブ「代表日誌」2018年9月
2018年10月09日
JIA長野県クラブ 荒井代表より「代表日誌」9月が届きました。(2018年9月30日)
9月1日
まちなみウォッチングin平出
JIA長野県クラブ まちづくり委員会主催で、塩尻市平出地区のウォッチングを行いました。雨が心配されましたが会員やその家族、所員、合わせて29人も参加してくださいました。
案内は平出にお住まいの川上恵一元代表と、地元保存会のお二人にお願いしました。川上さんは情熱の人ですから、超熱い語りで盛り上げてくれます。盛り上がりすぎて時間超過、後半の座談会は中止。
私が代表になり まちづくり委員会にお願いしたのが、会員の家族も参加できるピクニックのような楽しい “まちなみウォッチング ” の開催です。委員会の方たちが努力して下さったお陰で、協力会員やその家族も多数参加して下さいました。
平出地区を歩いたのは初めてです。平出といえばすぐに思い出すのが縄文遺跡です。まずそこを見学して集落内に入ると、本棟住宅が何件も残る風景が、ごく当たり前に存在していました。石積の清らかな小川、曲がりくねった道、このように集落全体に伝統的建造物が広がる風景は、初めての経験で大変感動しました。重伝建への登録 ぜひ実現させて下さい。
川上さん、地域の皆さん 楽しい午後のひと時を、ありがとうございました。
ウォッチング終了と同時に待っていたかのように大粒の雨が降りだし、まさしくクモの子を散らすように解散となりました。
9月7日
松本安曇野住宅建築展開催
初めはJIAの会員のみで始められた建築展も今年で12回目となり、会員外の地元建築士も加わり 17名の参加です。地域に建築の楽しさを伝え 建築力を高めるためには、JIA会員だけでなく他の建築士との協力が不可欠だと考えており、この建築展が大きく発展することを望んでいます。この中から将来 JIA長野県クラブに入会してくれる人が出てくれることも、期待しています。
今年のお題は『私の小屋』17種類の小屋を楽しむことが出来ました。テーマを決めて表現するのは初めての試みでしたが、私のなんちゃって小屋を除くと、皆さん気合入りの力作ばかりで、ある程度の評価をいただけたのではないでしょうか。お陰様で3日間で約700人の入場者がありました。
8日は 恒例のこどものためのワークショップ『インスタント建築』も開かれました。竹を使ってドームを作り、最後は全員で入って記念撮影です。
9月13日
今年最大のイベント、アルカジア東京大会2018+JIA建築家大会2018東京が開催されました。
13日はアルカジアのテーマセッション2 と テーマセッション3に参加。
2の基調講演は槇文彦氏、槇さんといえば私の世代では何といっても代官山ヒルサイドテラスです。外部空間と建物の有機的な連なり、町並みへの発展、私の教科書的建築郡です。今回は丘の上葬祭場から話が始まりました。この作品もシンプルな素材構成と静かな空間をもつ建築で大好きな作品です。実は個人的に、最近の槇さんの作品が分からなくなっていました。ごちゃごちゃしていて、場当たり的な感じとでもいいましょうか、自然発生的に出来上がる建築郡を一つの大規模建築で表現するというのが狙いなのでしょうが、槇さんの美しい建築ではなくなっているように感じていました。ところが最後の4 ワールドトレードセンターは、モニュメント的美しさを持った品位のある美しい建物で、強い精神性を感じました。この作品を最後に持ってきたことや、一本の並木道を写してここを歩いていきたいなどと言っている事など、なんだかこれが最後の講演だと悟っているようで、ちょっと鳥肌が立ちました。
その後にテーマプレゼンテーション2、ヘン・チャイ・キャン(シンガポール)、キャロライン・ボス(オランダ)の講演がありましたが、槇さんが大幅に時間超過してしまい、駆け足での講演となってしまい残念でした。
キャンさんはシンガポールの旧市街地をはなれ、職住一体型周辺都市の計画を発表されました。実に決め細やかなシミュレーションを繰り返し計画されており、完成予想のCG画像などまるでそこにあるかのように感じてしまうほどです。とにかく分析力に驚きです。
ボスさんはコンクリート造の可能性を突き詰めたような作品、貝のような造形で、ただただ圧倒されるばかり。コストは完全に無視されています。こういう人もいて良いのかもしれませんね。
テーマセッション3では日建設計の新谷耕平氏が東京スカイツリーの話を、JR東日本の清水正人氏が東京駅復元の話をしてくれました。スカイツリーは皆さんご存知なのでパス。東京駅は駅機能を残したままの保存復元工事の難しさを知ることが出来ました。日本の技術力は凄い!
夜、東京に出てきた長野県クラブの人たちと、乃木坂の居酒屋でプレ飲み会。たぶん8人だったと思いますが、美味しくて楽しい飲み会でした。
9月14日
午前中はアルカジアのテーマセッション4、午後がJIA建築家大会2018東京でした。
テーマセッションの基調講演は ヤスミーン・ラリ(パキスタン)。歴史的建造物の保存修復を専門に行っている人ですが、被災者支援と難民キャンプの低コスト住宅プロジェクトの話が大変興味深く、スター建築家達はたった1%の富裕層のための建築をしているに過ぎず、99%の貧しい人々はトイレも無い 囲いも無い大変厳しい住環境に置かれている、という話に胸を打たれました。200ドルあれば現地調達の材料で家ができるのだそうです。建築家としての立ち位置を問われているようで、本当に考えさせられました。
建築家大会では藤本壮介氏、野老朝雄氏、五十嵐太郎氏の対談『素なることと多様な相』がメインです。野老氏は東京五輪のエンブレムの作者で、単純な四角形を組み合わせることであのデザインが出来ていることを語り、藤本氏は入れ子状の住宅を中心に講演してくれました。なるほど単純なものの繰り返しや組み合わせで、多様な魅力あるデザインが生まれているのだなと、よく分かる対談になっていました。しかし、午前中のラリ氏の講演の後では、なんて能天気なことを言っているのか、複雑化するための費用を貧しい人に回せば何人の人々が救われるのかと考えてしまう私でした。
夜のレセプションはグランドハイアットです。もう二度と入らないだろうな と、思い切り食べて飲んできました。
二次会は長野県クラブ企画の「東京で飲もう会」本番です。やっぱり貧乏人の私にはこちらの方が楽しいのです。佐藤さんが見つけてくれたスペインバルとても美味しくてよい店でしたが、腹いっぱいの私はほとんど食べられませんでした。残念。
9月15日
全国地域会会長会議に出席、様々なテーマで机ごとで討議してきました。各地域会代表と話が出来たことは大変有意義でした。ゆくゆくは他地域会との交流も増やしていく必要がありそうです。
9月20日
JIA長野県クラブ 災害対策ワーキンググループ会議を行いました。長野県内で災害が発生した場合と県外で発生した場合とで分けて考える必要が有ること、長野地域会内部の連絡網を整えることなどを確認しあいました。情報共有の手段としてラインを活用することも考えていくべきだとの意見も出ています。
《コーヒーブレイク》
ちょっと趣味の話をします。クラシック音楽の鑑賞が大好きで機会があれば、そしてお金が許せば東京や名古屋までクラシックを聴きに行きます。チケット代よりも交通費と宿泊費が高くなりますので、遠出はかなりの決意が必要になります。20代まではどちらかというと、生演奏よりもオーディオシステムで聴くことが多く、いかに良い音を出すか、ということが主になっていました。スピーカーの自作から始まり、真空管アンプ、カートリッジ、スピーカーケーブルと幾らでもお金が掛かることがはっきりしてきました。金額は言えませんが、たぶん山口前代表の次ぐらいに使っているかもしれません。しかし幾ら頑張っても生のコンサートにはかないません。
ポピュラーミュージックの場合は生といえどもPAの音。つまりアンプを通したスピーカーの音を聴いていますので、自宅のシステムが良ければ、会場以上の音を再生できる可能性があります。クラシックは絶対に不可能です。ある時ふと気がつきました。上限の無いオーディオにお金を費やすのをやめて、生演奏を聴きに言ったほうが安いのではないかと。
それ以来 新規にオーディオ製品を買うのをやめて、コンサートに行くことにしています。最近はOMFのサンサーンスの3番とバルカン交響楽団のベートーヴェンの9番をカノラホールで、N響のカルミナブラーナをNHKホールで聴きました。内容は次回の日誌で書きます。
9月25日
“信州の木“建築賞二次審査を二日間掛けて行いました。
残った7作品は 北は上山田温泉の公衆浴場から、南は阿智村の満蒙開拓平和記念館まで。移動距離が半端ありません。最終的に最優秀賞が1点、優秀賞が1点と決定。その他の候補はあともう少しというところ、様々な理由で残念ながら受賞できませんでした。審査基準をかなり厳しくしましたので、受賞できなかった作品が良くないということではありません。優秀賞の2作品は長野県クラブの仲間の作品です。
9月28日
JIA長野県クラブ 第2回「仕事を語る会」現場見学会
林 隆さん設計の別荘を見学しました。要望が一番多かった人だけあって、参加者多数で大盛況でした。施主との打ち合わせ内容や失敗談聞きながら、じっくりと見学させていただきました。映像で見るのも勉強になりますが、やはり本物の建物にはかないません。コンパクトながら豊かな空間に皆さん感心していました。このような現場見学会は今後も機会を作って続けて生きたいと思います。