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【第1回 JIA長野建築賞 2022】受賞作品の紹介と審査講評

第1回 JIA長野建築賞 2022 受賞作品の紹介と審査講評(2022年12月22日)

 主催:公益社団法人日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

 審査員:内藤 廣(建築家)

 応募総数:59作品

 

【大賞】(1点)

「新張の家(みはりのいえ)」 花岡徳秋(花岡徳秋建築設計事務所)

 

【入賞】(3点)

「森の小屋」 佐藤 文+鹿嶌信哉((株)K+Sアーキテクツ)

「納屋の佇まいの家」 池内 剛(池内建築図案室)

「大町 八王子神社 授与所」 吉田 満+保科京子((株)スタジオアウラ)

 ※入賞作品の記載は応募受付順です

 

【審査講評】 内藤 廣

 現地審査についての印象を述べます。

 まず、我々の審査に心良く応じてくださった建て主の皆様に御礼申し上げたいと思います。審査の公平を期するため滞在時間が30分程度でしたが、どの作品も居心地が良く、審査でなければもっと長い時間その空間に身を置いていたいと感じました。伺ったのは日中でしたが、夜はどんなだろうと想像したり、審査の両日とも曇天と小雨模様でしたが、晴れたらどんな空間になるのだろう、真夏や真冬ならどんなだろう、そんなことを思い浮かべながら拝見しました。楽しい体験でした。

 どの建物も個性的でしたが、敷地条件や事情も異なり、優劣を一概に横一線で評価する難しさを改めて感じました。結果として、現地審査に至った作品はどれも高いレベルで異なる「人の居場所」を生み出しており、それに敬意を表して四作品とも本賞に該当するものと判断しました。応募要項に大賞を差し上げることになっていましたので、迷った結果、「新張の家(みはりのいえ)」を応募された花岡徳秋さんに差し上げることにしました。

 また、拝見した作品はどれも建築家が建て主の意向をいかに受け止め、それを現実化するかと腐心したところに特徴があり、建て主も共同製作者ではないかと考えるに至りました。我々建築家は、優れた建て主に出会えて初めて良い建物を作り上げることができます。それ故、建て主の方も顕彰したいと考え、事務局にお願いして賞を差し上げることにしました。

 以下、現地審査の印象を述べます。(現地審査順)

 

■「納屋の佇まいの家」 池内建築図案室の池内 剛さん

池内さんは控えめな人柄で、独立されてからなかなか良い仕事に出会えずに、まとまった一戸建ての住宅の設計は初めてとのことでした。にもかかわらず、建物全体の佇まい、低く押さえられた屋根、庇の高さ、開口部のプロポーション、建具のディテール、どれも配慮が行き届いていて素晴らしい建物でした。寝室だけ一段低く下げていることなど、空間的な配慮もよく考えられていました。細部をおろそかにしないために手書きの図面にこだわり、その良さがよく現れた住宅でした。そのこだわりが、デザイナーだった建て主ご夫婦の暮らしへのこだわりと心地よく響き合っていました。

 

■「大町 八王子神社 授与所」 スタジオアウラの吉田 満さんと保科京子さん

建て主の宮司さんと奥様は、地域の14の神社をつないで新たなネットワークを作り出そうとしています。そのハブとなる拠点が応募作品です。小さなスペースですが、細部までよく考えられた密度のある空間でした。本宅は文化財になりそうな立派なお宅で、その脇にある古い蔵に、切り込むように新たな要素を差し込んでいます。伝統を尊重しつつ新たな空気を生み出そうという気迫溢れる空間でした。蔵の壁を痛めないように細心の注意を払いながら、コンクリートの壁が斜めに配されています。説明では、大切にされている庭に向かう軸線とのことでした。外構では本殿からの水路にこだわり、内部にも小さな水桶を配して清澄な空気を醸し出しています。

 

■「新張の家(みはりのいえ)」 花岡徳秋建築設計事務所の花岡徳秋さん

不思議な空間体験でした。鉄骨の作業場の骨組みを残して外断熱で包んで暮らしの場を作る、そこまでは想像できるのですが、実際の空間はリノベーションの域をはるかに越えていました。骨組みを残すこと自体をクリエィティブな価値にうまく置き換えることに成功していました。意匠的には斜めにRCの内壁を作ったこと、それを利用して二階を作ったこと、実にシンプルでミニマム、それだけなのですが、それがイキイキとした空間を生み出しています。何よりご夫妻のセンスがいい。たとえば、キッチンは何もかもが露出しているのですが、それが雑然としつつも風景になっていて、これには驚きました。家具や雑多なものたち全てを通して、建て主がこの空間を楽しんでいることが伝わってきました。暮らす、ということの意味と住宅そのものの果たすべき役割の原点を見たような気がしました。わずかな時間でしたが、訪問者としてこの空間にわが身を置いて楽しむことができました。

 

■「森の小屋」 K+Sアーキテクツの佐藤 文さんと鹿嶌信哉さん

都会で慌ただしく暮らしているひとりの同業者として、こういう建物を手に入れたいという気持ちは痛いほどよくわかります。美しい森の中、それを呼吸するような小さなスペース、まるで建物の森林浴です。羨ましい限りです。わずかにのぞく屋根の庇のディテールの繊細さには驚きました。とても薄い。ざっくりと組み合わされたブロックと大きな開口部に対して、この繊細なディテールがとても効果的で印象に残りました。戦後の最小限住宅、東孝光さんの塔状住居、鯨井勇さんのプーライエ、それらの間取りが頭に浮かびました。余計なものは何も持ち込まない、森からの無言のメッセージを耳を澄まして受け取るための精神的な場、これも都会で暮らす人にとっては必要不可欠な居場所であることを感じました。

 

 

 地域会が試みる第一回目の企画なので、大きな責任を感じつつ選定をしました。

 力作揃い、それも一次選考は限られた図面と写真での審査なので、選定した私の方はまるで確信がありませんでした。選外にした作品の中にも、実際に行って空間を体験してみたら素晴らしいものがあったかも知れません。残念ながら資料での判定には限界があります。建築とはそういうものだ、と割り切って判断しました。二次選考の現地審査では、選んだ作品が間違っていなかったか、いささか不安を持ちながら臨みました。結果は、どれもレベルの高い作品で安堵しました。

 もとより、応募者がいなければ企画は成り立ちません。まずもって、たくさんの応募をいただいた皆様に御礼申し上げたいと思います。このような企画は切磋琢磨する場であり、かつて前川國男先生が言われていたように、建築界は談論風発の場であるべきです。この催しも、JIA長野県クラブ、さらには長野の建築文化を称揚し活性化させる場でもあるので、皆さんの応募に敬意を表したいと思います。

可能な限り意を尽くしましたが、今回の結果は、私なりの独断専行、全ての責任は私にあります。

 最後に、この企画を立ち上げた有志と事務局にエールを送りたいと思います。この意思こそが、JIAが保持してきた純度の高い精神の発露なのだと信じます。

 今後の健闘を祈ります。

 

 

【大賞】

「新張の家(みはりのいえ)」 花岡徳秋(花岡徳秋建築設計事務所)

 

 

 

【入賞】

「森の小屋」 佐藤 文+鹿嶌信哉((株)K+Sアーキテクツ)

 

 

 

【入賞】

「納屋の佇まいの家」 池内 剛(池内建築図案室)

 

 

 

【入賞】

「大町 八王子神社 授与所」 吉田 満+保科京子((株)スタジオアウラ)

 

 

 

     2023/01/11  JIA長野建築賞

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