【第2回 JIA長野建築賞 2023】受賞作品の紹介と審査講評

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

【第2回 JIA長野建築賞 2023】受賞作品の紹介と審査講評

第2回 JIA 長野建築賞 2023 受賞作品の紹介と審査講評

主催:公益社団法人日本建築家協会 関東甲信越支部長野地域会

審査員:伊東豊雄 氏

応募総数:73点

 

【最優秀賞】1点

建物名「コードマーク御代田」
設計者:会田友朗(株式会社アイダアトリエ)

 

【優秀賞】1点

建物名「Fujimi  Hut」
設計者:坂牛卓、平田柳(O.F.D.A.)

 

【入賞】3点(応募受付順)

建物名「miike」
設計者:井原正揮+井原佳代(株式会社ihrmk)

 

建物名「黒姫の山荘」
設計者:下﨑明久(下﨑建築設計事務所)

 

建物名「Shell  House/もりのいえ」
設計者:遠野未来(遠野未来建築事務所)

 

【審査講評】伊東豊雄

今年 私が少年時代を過ごした長野県で建築賞の審査員をさせて頂きました。
72作品もの応募を頂き、有難うございました。長野県は美しい自然環境に恵まれているだけあって、応募作品の多くは住宅や別荘でその佇まいは伸びやかで、東京暮らしを長く続けている私としては羨ましい限りでした。そうした作品のなかから選ぶのは決して容易ではありませんでしたが、独断で5作品を選び、現地審査に臨みました。

現地審査での5つのプロジェクトは、本当にいずれの作品も素晴らしかったです。
2日間で約600kmを車で廻り、最優秀賞、優秀賞を決定させて頂きました。悩んだ末の決定ですが、この間の事務局の方々の御協力に心から御礼申し上げる次第です。

 

(最優秀賞)「コードマーク御代田」 会田友朗さん

御代田の田園の中でスパイラル状の建築ですね。上昇する、これから上へ向かって伸びていくんだという気持ちがよく表れた建築でした。わたくしが一番感心したのは、クライアントの方と建築がひとつになって、つまりここでの活動と建築とがひとつのものであることが表現に現れていることでした。わたくしは今回募集の趣旨に、コロナ以降 新しい生活とか新しい働き方が、どのように新しいモデル、長野としてのモデルを作ってくれるのだろうか、という期待を述べたつもりでした。そのことに一番応えてくださったのが会田さんたちのコードマーク御代田という作品でした。
これは民間の施設ですが、地域の拠点となるような小さなコミュニティのための施設であって、そこに集まってくる人は、田畑を耕したりする人もいれば、アーティストの方もおられますし、活動の趣旨に共感された方々が集まって、そこでコンサートを開いたり、作ったお米で餅つきをやったり、地域に対して開いていく、あるいは新しい地域を作っていこうとする精神がみなぎっていて、建築以上にそういう趣旨に、わたくしは大変感動を覚えました。

 

(優秀賞)「Fujimi   Hut」 坂牛卓さん、平田柳さん

優秀賞の坂牛さん達の建築は、三間×三間の住宅で本当に小さい作品です。災害時の仮設住宅は二間×三間なのです。ですから三間四方と言ったらそれをちょっと広げたぐらいの広さで、外側は普通のごく自然な切妻の佇まいなのですが、中に入って驚いたのですが、ものすごく濃密な空間が作られていて、こんな狭い空間でこんなことが出来るのだろうか、と大変感心しました。
しかもほとんどすべて構造用合板で内側は作られていて、それがベッドからベンチになり、ダイニングテーブルにそのまま代わってしまうような、3段階の高さを利用して流動的な空間がつくられているのです。
もうひとつは、坂牛さんは東京に住まわれていて、信州大学でも教えておられたのですが、冨士見に来て1ヶ月の1/3くらいの生活をここで過ごされると伺いました。坂牛さんは建築に関わるインタビューの活動なんかもされていて、小さな空間にいろんな人が訪ねてこられ、場合によったらそこで5~6人が寝てしまうと伺いました。こんな小さな空間を巧みに活用されておられることに対し、素晴らしいと感じました。

 

(入賞)「miike」 井原正揮さん、井原佳代さん

井原さんたちのプロジェクトは、クライアントの方から建て替えようか、それともそのままリノベーションしようか相談を受けたと伺いました。その時に井原さんたちは、何とかこの地域の風景のことを考えて、農業用倉庫だった建物をそのまま使って、改修して美容院にしようという事になったそうです。
大変素朴な農業用倉庫のインテリア、中に入っても非常に質素な佇まいがそのまま残っていて大変好感を抱きました。リノベーションのプロジェクトの中では一番良かったと思っているのですが、欲を言わせていただければ、そこで美容院をするだけではなくて、もう少し地域のために新しい活動がこのスペースを使って出来ないかと感じた次第です。

 

(入賞)「黒姫の山荘」 下﨑明久さん

下﨑さんは県内にお住まいで地域に根ざした建築活動をやっておられる方ですが、ものすごく美しい完成度の高い別荘でした。クライアントから僕もびっくりするくらい詳しい建築に対する要望書をもらって、それをひとつひとつ解決していく緻密な作業をされたようです。それを箇条書きにされた要望の数々を見て、驚きました。ファサードも大変きれいだし、横からの立面もとてもきれいなプロポーションです。内部のインテリアも美しい、別荘としては本当によくできた建物だと思ったのですが、今回先ほども申し上げたように、そこから何か新しい建築のモデル、新しい住まい方とか働き方に発展していってほしいという趣旨からいうと、従来の意味で最も美しい別荘をつくられた、ということに終始されたように思いました。

 

(入賞)「Shell House / もりのいえ」 遠野未来さん

これはある意味では今回の5つのプロジェクトの中で、もっともエネルギーのかかった力作でした。審査員によっては最優秀作になったのかもしれません。おそらく施工も大変だっただろうと思います。
この作品はドームなんです、木造のドームなのですが、幾何学的なドームではなくて非幾何学的な建築なので、1本1本 木材の形も違う事を丁寧にやり遂げています。そして土壁と木とで作るという設計者の強い意志が伝わってきたのですが、あまりに作者の気持ちが強すぎて、他の人達に開かれていかない、設計者という個人で閉じてしまっている、失礼な言い方になるかもしれないのですが、個人のエネルギーの中で完結してしまっている。という印象を受けて入賞にさせていただきました。

 

以上が簡単なわたくしのコメントで、反論もおありかとは思いますが、今回私の独断で賞を決めさせていただいた次第です。

 

【最優秀賞】

建物名「コードマーク御代田」
設計者:会田友朗(株式会社アイダアトリエ)

Photo:野秋達也

Photo:野秋達也

 

【優秀賞】

建物名「Fujimi  Hut」
設計者:坂牛卓、平田柳(O.F.D.A.)

 

 

 

【入賞】

建物名「miike」
設計者:井原正揮+井原佳代(株式会社ihrmk)

Photo:Kenya Chiba

Photo:Kenya Chiba

 

建物名「黒姫の山荘」
設計者:下﨑明久(下﨑建築設計事務所)

Photo:林安直

Photo:林安直

 

建物名「Shell  House/もりのいえ」
設計者:遠野未来(遠野未来建築事務所)

 

 

 

   2023年, JIA長野建築賞

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