フィンランド紀行

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

フィンランド紀行

「フィンランド紀行」(2014.06.23) 轟 真也(源池設計室)

 

今年の正月休みにフィンランドに行ってきました。

日本に一番近いヨーロッパ。意外な気もしますが日本から約9.5時間のフライトで、ヨーロッパの玄関口となるヴァンター国際空港に着きます。 ヘルシンキはフィンランドの首都ではありますが、それほど大きな都市ではないため、交通機関も比較的わかりやすく、街中を回っているトラムとヘルシンキ中央駅が始発となる電車で割と好きなところへ行くことができます。

ただなんといっても冬の北欧ですから、明るい時間が極端に少ないのです。8日間の旅行中、太陽はついに一回も見ることはできませんでした。

 

 

 

今回の目的はやはりアールト建築に触れること。
市街地にはフィンランディアホールや国民年金協会、電力会社社屋などのビル建築のほかにアカデミア書店やヘルシンキの街を一望できるレストラン・サヴォイなどがあります。
アールトの自邸やアトリエはトラム4に乗った高級住宅地の中にあります。低く抑えられた自邸は大きな住宅が並ぶ中では見落として通り過ぎてしまいそうなほど通りになじんでおりました。
レンガに漆喰を塗った質感がとてもよく、短い緑の時期には白さが際立ち、雪の中では同化するけれどもレンガの凹凸に映し出される光の陰影が暖かささえ感じさせてくれるのでは、ないかと思われました。

 

 

内部はスケール感が日本人のそれにぴたりと来る感覚があり、天井の高低や窓とのバランスが非常に心地良いものになっていました。そして私たちがこだわるディテールデザインの元になるようなものがあちらこちらに見受けられるのです。
この自宅が建てられた当時は室内から海が見渡せたとのことで、腰の低い窓からちょうど見えたであろう湖のように穏やかな水面は時間の流れをさらにゆっくりとしたものにしてくれたと思われます。

 

 

ビィラから数百メートルのところにアトリエがあります。野外劇場にもなる中庭を囲むようにコの字型に作られたアトリエは、象徴的ともいえる片流れの勾配屋根となっています。
1階は周囲に対して閉鎖され、中庭側に開放し落ち着いた空間となっています。2階の作業スペースは高さの違う窓が開けられ日差しの調整をすると共に、こちらは外部に対して解放し周りの木々が見えるようになっています。夏が短く太陽光が貴重な場所であるからこそ、自然光の取り入れ方や使い方に様々な工夫が感じられました。

 

 

今回の旅では友人の家にも招いていただき、旅行ではなかなか見ることのできないごく一般的で、しかも年季の入った住宅建築も見ることが出来、サウナも堪能させていただきました。

 

 

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