冬のセミナー『浅間温泉まち歩き』開催しました

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

冬のセミナー『浅間温泉まち歩き』開催しました

JIA長野県クラブ 正会員建築家 宮坂直志さん(山の辺建築設計事務所)から、冬のセミナー『浅間温泉まち歩き』の報告です。正会員建築家18名、法人協力会員3名、事務局の22名が参加しました。(2020年12月4日)

 

12月4日、冬のセミナー「浅間温泉まち歩き」に参加してきました。

講師、案内役はまちづくり委員長の山田健一郎さんが中心となり、松本市美術館主催で毎年行われている、「建築家と巡る城下町タイムトラベル」で案内役を務めているJIA会員の皆さんです。

巡ったコースは2018年のタイムトラベルのものを短縮したものでしたが、人との距離は疎ながら内容は密(濃いもの)で、参加して楽しいひと時を過ごすことができました。

 

 

まずは会議室で浅間温泉の歴史に触れました。

その歴史は古く、日本書紀にも登場し「束間の湯」と呼ばれていたそうですが、西暦1000年頃には浅間温泉と呼ばれ始めたそうです。江戸時代には初代松本藩主の石川数正により「御殿湯」が置かれ、松本の奥座敷として発展します。また、明治になると蚕種の農家が蚕種の買い付けに来た人などを相手に兼業で湯治宿を営んで大発展をします。

 

私が子供の頃に電車通りと聞いていた、駅前の大通りはまさに浅間温泉と松本駅を結ぶチンチン電車が走っていた通りで、大正13年から昭和39年まで、運行時間は朝5時から夜12時までで、10分から20分間隔で走っていたそうです。現在と比較するとその繁栄ぶりがいかに凄かったのか、簡単に想像できます。

浅間温泉は文人墨客にも愛され、伊藤左千夫や正岡子規からなるアララギ派の発祥の地となり、竹久夢二、与謝野晶子、若山牧水ら多くの文人墨客が訪れて作品を残したそうです。

 

松本出身で浅間温泉の近くで育った私ですが、恥ずかしながら全く浅間温泉のことを知らず情けない限りでした。(どこかでは聞いていたかもしれませんが、全く頭に入っていなかったです)前向きに考えればこのタイミングで知れたことは良かったです。

 

そんな浅間温泉でしたが、戦後の蚕種産業の後退と共に衰退し、木造の湯治宿の多くは鉄筋コンクリートに替わり、温泉付きの介護施設になるなど時代の流れに飲まれていき、現在に至ります。

 

講義の後、まち巡り開始です。

 

「松門文庫」  個人的にずうっとなんだろうと思っていた建物。

蚕種業で発展した二木家「たまりや」へ養子に来た二木洵氏が大正8年に建設した建物で、100年近く経過していますが左官仕事の凄さがわかります。

 

建物が近代化しても通りは当時のままなので、昔の写真と比較し思いを馳せます。

 

そして、さすがJIA。道中には会員が手がけた物件が。

 


川上恵一さんによる民家再生

 

林 隆さんによる住宅1

 

林 隆さんによる住宅2

 

倉橋建築計画事務所による旅館再生が多数

 

目の湯
創業240年、蚕種の農家が兼業で始めた湯治湯の一つだそうです。当時は切り妻屋根の本棟作りだったそうですが、途中、入母屋作りに改修されていますが、原型は当時のままだそうです。写真では分かりづらいですが、玄関正面の人力車が時代を経て車(フォード?)に変わっているなど時代の流れが良くわかって面白いです。

 

そして、ここからさらにディープな路地に入ります。案内役の山田さんが一番お気に入りの路地だそうです。今回は行けませんでしたが、この先の山には桜ヶ丘古墳という古墳もあるようです。

 

普通に歩いていては絶対に気づかない細かな所にも解説が入ります。これもJIAならでは。今では入手できない地元の特産、山辺石の石積み

 

残念ながら解体されてしまった松本市内にあった山崎歯科医院と同じイギリス様式の赤レンガ作りの塀

 

亀甲型の石積み

 

坂道の勾配に合わせて成形された平行四辺形のコンクリートブロック塀

 

現在はギャラリーとなっている「ゆこもり」さんは、湯治湯や小料理店の他、今でいうシェアハウスを営んでいたそうです。

 

まだまだ続きます、まち歩き。

 

 

ところどころに気になる建物が佇んでいます。

 

この先に源泉小屋があります。

 

荒井さんに教えていただいた、お薦めの建物(床屋さん)確かに気になります。2階の空間。

 

今は使用されていませんが、木造3階建ての飯田屋さん。このまま朽ちるには惜しいですが、今のところ改修予定はないそうです。

 

そしてコース終盤、松本十帖として今年リニューアルオープンの小柳さんを通りました。

 

こちらも松本十帖さんのコーヒーとおやきのお店。意外な組み合わせですがどうなんでしょうか。

浅間温泉には仲間湯という浴場があります。
湯仲間と呼ばれる地元の人が共同で管理している場所で、湯仲間であれば誰でもいつでも入れる温泉なのだそうです。この建物も松本十帖が入っていますが、実は仲間湯にもなっているそうです。

 

 

最後はチンチン電車の終着駅の跡地でまち巡りが終了です。

 

普段は安曇野市へ抜ける通り道で車でよく通る浅間温泉ですが、こんなに歩きながらゆっくり散策したのは初めてでした。

近くにあるものものほど当たり前で自分が何も知らなかったことに恥じらいを感じながらの道中でしたが、コロナ禍で気持ちが沈みがちの中、とても気持ちのよいまち巡りができました。

こういう時だからこそ、足元を、近場をじっくり知るいい機会になりました。あまりにも気持ちが良く、キョロキョロしていたので肝心な町案内の説明を聞き忘れることが多々。(山田さん、すみません。)あまり内容のないブログを書くことになってしまいました。

 

COVID-19の新規感染者が増え続けていて、この先の予定もどうなるか分かりません。通常ならばセミナー後の懇親会があるのですが、それは中止となりました。マスクなしで話して、笑い合える、そんな日常に早く戻ってほしいものです。

 

 

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