JIA長野県クラブ「代表日誌」2021年9月

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

JIA長野県クラブ「代表日誌」2021年9月

JIA長野県クラブ 新井 優 代表より「代表日誌」が届きました。(2021年10月13日)

 

新型コロナも急激に納まりつつあり、行事もリアルで開催出来る条件が揃ってきました。幾つかのリアル活動を通じて、実際に顔を合わせての交流はやっぱり良いなと再認識。この様な普通な感情をいだける事自体が、異常事態の中で突っ走ってきたJIA活動だったのかと振り返ります。

 

・9/7 事業委員会(JIA長野県クラブ)

本年は松本市美術館改修工事につき、会場をまつもと市民芸術館に変えて開催予定。コンクール会場の配置計画を検討。事前準備に対して頑張っている事業委員会に感謝です。コロナ第6波に備えての準備も進めますが、何とか本年度はリアルでフル開催を願っています。

 

・9/10 新建新聞取材

地域材利用における、構造と断熱気密施工の標準化について、普段行っている仕様についての取材を受けました。地域材の家づくりの場合は、構造を美しく見せつつ、断熱気密施工も合理的に行える方法をずっと考えてきました。たいしたノウハウではありませんが、全国の事例も含めて紹介されるのでお楽しみに(新建ハウジング2021/10月号 販売中)

 

・9/13 長野県ゼロカーボン駐在所プロポ 審査会(駒ヶ根)

前回、応募が無かった駒ヶ根地区の駐在所プロポでしたが、再応募を募り審査会を行いました。前回(8/27)で慣れていたため、スムーズに審査が進行しました。

 

・9/13 出版会議(JIA長野県クラブ)

参加者全員の資料が揃い、飯田さんより三部構成案と撮影候補者が示され検討しました。本年も参加者の作品は力作揃いで、コロナ禍の中でもJIAメンバーの力強さを感じました。発刊は令和三年度末を堅持していきます。

 

・9/14 長野県林業大学校男子寮 構造見学会(JIA長野県クラブ)

男子寮棟の上棟が進み耐力壁施工前に構造見学会を行いました。急激に広がったコロナ第5波により、午後の木曽町役場見学と千田先生の講演は残念ながら延期となりました。次回は男子寮完成見学会と合わせて木曽町役場の見学を行います。

 

 

 

・9/16 長野県林業大学校男子寮 案内

長野県林務部の構造見学会案内。

木曽地域振興局林務部及び木曽地域林務関係者の見学会案内

 

・9/30 長野県林業大学校男子寮 案内

林大学生の構造見学会案内。

 

・9/24 信州の木建築賞 一次審査会

本年度は木造建築で木材使用量30m3以上(その内地域材使用量20m3以上)と、非常に巾のある応募要項で、応募案も役場庁舎から住宅まで幅広かった。

 

いずれも力作揃いで審査に困ったが、地域材使用は大規模公共建築と住宅と両極端で、一般建築(非住宅)での利用が進んでいないと思った。ウッドショックの影響もあり木造をわざわざ鉄骨化する状況も聞くが、地域材は私たちの手に届く範囲にあると思っています。少なくとも鉄骨造より安価で出来る一般木造のあり方は、JIA長野県クラブでリードしていく必用を感じた。

 

非常に巾の広い応募案でしたが、最終的には建築的な質、そして木造としてプランと断面も含めた合理的な構造計画、木造が生み出す建築と市民の交流の場としての社会性、住まいとしては居心地の良さと地域性等々に目を向けて審査会に臨んだ。10月の二次審査が楽しみです。

 

9/28 総務委員会(JIA長野県クラブ)

令和三年度後半の行事の準備進行具合の検証や、規約改正原案の検討等々。総務委員会は様々なJIA長野県クラブの活動の検討の場、幹事会は意志決定の場として、総務委員会の立ち位置を進めていく。

 

 

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《 その他 》

地域材利用や木質バイオマス利用が、再生可能エネルギーに算入されない問題について、専門委員として関わっている『信州型ゼロエネ住宅(仮称)推進指針検討専門委員会』の場や、8/12にJIA支部 カーボンニュートラルセミナーにて私心を捨てて訴えてきた。

地域材と木質バイオマスへの思いをまとめました。皆様のご意見も是非お寄せ下さい。

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人類の歴史から考えれば、ほんの少し前まで日本人の最も身近な材料でもあり、燃料でもあった近くの山の木。近くに山が無い平野の地域でも、平地林として薪炭利用のために、生活と共存しながら森林資源を守ってきた日本人的な生活感は『もったいない』『しまつ』『再利用=つかいまわし』として、精神性として昇華し代々受け継がれてきている。

 

日本の山は殆どが人工林であり、有史以来、山の木は利用しながら植林して再生していくサイクルで緑が保たれてきた。先進国の国土ではげ山が一つも無い日本は奇跡の国と言われている。また、現代の林業では、列状間伐と言って、ある面積の1/3のみ列状に伐採すると、太陽光が林床に届き、数年で元の在積を越えるほど成長する。

 

さらには、戦後植林した木が70年生を越えて大木化しており、木材利用が急務の状態である。(老木になるとCO2の吸収もわるくなり、更新していく必用がある)心配される伐採しても植林しないとの指摘もあるが、真面目に林業を進めている県にそのような山は一つもない。

 

ウッドショックが地域材に向いているが、生産体制において急激な需要に答える事も対応しかねており、今後とも木材利用推進は日本の山の維持においても、そして国土保全においても続けていくことが基本と考えている。

 

先進的な機器を使用した場合、数十年後には必ず更新時期を迎え、再度の高額の機器の購入が必用になり、その機器のLCCO2の償却も振り出しとなります。その点、木質バイオマスとして伐採した山の木は、植林され、自然の恩恵で育っていきCO2を吸収し続けます。

 

さて、基本的に環境に負荷を与える建築行為ではあるが、国産材利用(無垢の定尺材)や、木質バイオマス利用(薪、チップ、ペレット等)については、地球環境保全に貢献出来る最大の手法と信じて先進的に進めてきた作り手(設計者やビルダー)は全国に多い。

 

近くの山の木で造る家づくりは、その山にお金を返す一番有効な地域経済の活性化であり、地域の山の木で、地域の工務店、地域の職人、がつくる地場産業です。

 

以上の説明の上で、日本国内において地域材利用や木質バイオマス利用についての再生可能エネルギーへのカウントを希望します。

 

今まで、地球環境にとって最も優しいと考えてきた、地域材利用や木質バイオマス利用がゼロカーボンに何も貢献出来ないとすると、一気に地域の山の木に目が向かなくなる恐れも感じます。

 

既存住宅のゼロカーボン化にも木質バイオマス利用は貢献できると考えます。断熱性能を新築並みに上げる事が難しい既存住宅ですが、木質バイオマス暖房を再生可能エネルギーに算入することにより、新築並みに断熱性能を上げなくても計算が成り立ちます。

 

具体的には、国が進める(建築研究所等)の一次エネルギー消費量計算の後で、二次補正計算(恐らく県ごとに数値は変わってくると思いますが)を行って、そこで地域材利用や木質バイオマス利用が再生可能エネルギーにカウントされていくイメージを予想しています。

 

木質バイオマスの供給体制

電気の常時接続、都市ガス直結等、エネルギー供給が便利になり現代生活にとって供給に心配する人は居ない。

木質バイオマスについても、使用者が多くなれば薪の配達等、経済的に成り立つ方法として、『木の駅』等の社会システムを実践している市町村も多く、需給の関係で国内エネルギー循環として働き先としても有効と考えている。

 

 

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