JIA長野県クラブ「代表日誌」 2017年1月

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

JIA長野県クラブ「代表日誌」 2017年1月

JIA長野県クラブ 山口代表より「代表日誌」2017年1月 が届きました。(2017年1月31日)

 

1月6日 

新年恒例の県への挨拶で西澤、藤松両副代表と丸山監査役と事務局に集合した。去年まではこの席で次年度の予算案を検討していたが、今年度は支部への提出時期を更に早められてしまったので、すでに11月の幹事会で承認いただいているのはここで紹介した通りだ。

昼食に向かった先で建築士会本会の執行部の皆さんがいらっしゃったので新年の挨拶を済ませ、場々会長に宮本先生の追悼シンポジウムのことを説明し、士会の主催で検討していただきたい旨をお伝えした。その後場々会長からご連絡をいただき、三役会でも了承されたそうなので、新年度-恐らく今年の秋以降に実現の可能性が強い。JIAとしても全面的に協力させていただくとお伝えした。

 

今年は建設部と林務部にご挨拶した。岩田建築技監には温熱教室を高く評価していただいた。このような実務に則したセミナーは今まで行われていなかったので、今後も継続を期待されているようなお話だった。ちなみに、温熱教室全6回の資料はファイルに纏めて常に手元に置かれているそうだ。

県産材利用推進室は春日室長はお留守で岩間さんにご挨拶した。温熱教室で毎回木材利用の現状を紹介するコーナーを設けたことを紹介し、今年も引き続き県産材利用促進活動へのご協力をお願いした。

 

2018年のアルカシア大会及び全国大会の委員推薦について、長野県クラブとして山口満さんにお願いし承諾していただいた。冬のセミナー時に副代表、会長・代表経験者の皆さんから同意は得ていた人事である。いつから、どのくらいの頻度で開催されるか不明で、WEB会議の可能性もあるが、UIA大会の時の私の経験だと毎月の可能性もある。藤沼支部長にも推薦するつもりなのでご活躍を期待したい。

 

1月13日 

金曜の会:建築家 内藤廣の連続講座第5回「建築と建築家をめぐる法律について」

東日本大震災で積極的に復興支援に関わってきた陸前高田市と大槌町での経験から、総額24兆円もの巨額を投じて行われている復興事業が、非常時に全く対応できない国土交通六法と呼ばれる縦割りの法律によって都市計画的・土木的な知見で決定されていく仕組みから始まって、わが国の法体系全体にまで及ぶ解説がなされた。

 

他国の例として、ドイツでは法律をその時代の状況に合わせて書き換えていくが、日本では一度作られると法律自体は変更されることはなく、政令・省令のたぐいで事細かに書き加えられていく。例えば建設関連では、1960年の高度成長期に作られた法律がそのまま残り、時代にそぐわない部分は事細かに書き加えられ、その結果現状は身動きが取れない程のガチガチのものになってしまったと解説された。

 

建築関連では、景観法は戦後初めて作られた“私権に制限を加える”ことができる法律であること、建築基準法は「建築」ではなく「建物」の基準であることなどを指摘され、土木は公共的で建築は私的なものと見なされがちだが、多くの法律に謳われている“「公共の福祉」に資する”ことの定義がなされていない現状と、一般的な杓子定規の解釈にとらわれることなく建築の定義を再構築し、法令を含め広く社会に定着させる努力の必要を語られた。

 

1月15日 

松本市景観シンポジウム:松本市と建築士会松筑支部主催のシンポで、第2部の景観フォーラムから参加した。

香山先生の基調講演は“まちは「生きている博物館」”という演題で、“美しいまち”とは?というテーマ設定から近代以降に発展した“MUSEUM”(英語では美術館も博物館もMUSEUM)の役割を語源であるギリシャ語から紐解き、アクアポリス、N.Y.のメトロポリタンとシカゴの美術館、ルイス・カーン設計のイェール大学のブリティッシュアートセンターを例に解説された。次にまちと美術館の関係性をイギリスのチェスター、イタリアのルッカ、ベルギーのブルージュ、アメリカのフィラデルフィアとニューメキシコのプエブロ・インディアンの集落を例に紹介された。現在、先生はJIAの紹介で松本市基幹博物館施設構想策定委員をされている。

 

続いて轟社会貢献委員長の活動発表と山田健一郎さんが進行役を務めたパネルディスカッションが行われた。多くの意見とアイディアが出されたが、基調講演も含めた共通項として、松本城と松本駅、あがたの森なども含めた市街地に果たす役割、そして博物館単体の機能だけでなく、いかに多くの市民が集まれるあるいは行きたくなるような建築と敷地・周囲との関係を考慮し、導き出せるかが重要であるということだったように思った。

 

1月16日 

支部災害対策委員会拡大WG:委員会は東京から5名、県域の地域会から5名の10名で構成され、年6回開催されている。その他に20名の拡大WGがあり、今回は拡大WGである。この委員会は全てWEB会議だが、今日はWEB参加者の音声が支部の会議室で聞き取れないというトラブルで、発言はしたがほとんど向こうでは聞こえなかったようだ。議題は過去4年間の活動内容とその反省及び来年度へ向けての人事と課題の意見交換が行われた。

地方で地震が発生した場合をのぞき、委員会の一番大きなテーマは首都直下型地震への準備と対応の検討であるが、県域の立場から見ると問題意識と活動内容に於いて東京とは大きな乖離があるように思われる。ここでも関東甲信越支部の構造的問題が露呈しているとも言えるが、個人的には現在の委員会構成を変えて、東京問題はそれ専用のWGでやったらいかがかと思う。

 

1月17日 

第4回幹事会:約1ヶ月後に迫った建築祭の役割分担の確認とコンクール作品の内訳、講師謝礼などが協議された。くらしの空間セミナーは現時点で申込が少ないので、会としても法人協力会も含め積極的に広報する。北関東甲信越課題設計コンクールの審査員は今年も西澤副代表にお願いすることになった。

 

次に4月21日に行われる来年度の通常総会について役割分担を決める。総会時に毎年行われている会員集会は昨年ご逝去された宮本忠長先生の追悼イベントに決定した。外部からの講師は呼ばずに会員で先生の思い出を語る、というものになりそうである。

 

21日に開かれる県と建築5団体の災害時支援協定については、交通費などの経費と保険料も無償という内容について異論が出された。応急危険度判定に準じた内容でいいという意見が出されたが、建築士会は無償で行っている。また「応急危険度判定士」という資格を県が発行しているが、住宅相談に関してはそこは問われていない。会議では意見は表明するが、無償で決まる公算は強いと思う。その場合に、会としては全て参加者負担という訳にもいかないので何らかの対策は講じる必要があるだろう。公益法人は基金の積立ができないので、毎年予算に組込むことになるかもしれない。

 

冬のセミナーの報告があり、酒代が心配されたが予算内に収まったようです。企画も大変好評で、このような企画を次もお願いしたいという要望も出された。この場を借りて関係者の皆様に再度御礼申し上げます。

 

幹事会に先立ち事業委員会が松本市美術館で行われた。ポスター・チラシの配布と広報、くらしの空間セミナーの応募状況、講師スケジュールの確認に続き、タイムスケジュールと備品の確認及び役割分担が決定された。審査員は近県3県から今年は群馬のみとなり、新たに松本市美術館 小川館長に依頼しているので総数としては1名少なくなる。

 

1月20日 

第6回常任幹事会:後に「新春の集い」が控えているのと遅刻者が多く非常にタイトな会議となった。

議題は東京地域会について、AG祭2017及びARCASIA2018の状況報告、2018年度活動方針及び予算案についてなどであった。

東京の地域会の扱いについては今までにも触れてきたが、非常に複雑でデリケートな問題でもある。早急に結論を出すのではなく、現状14の地域会とオフィシャルではない東京地域連携会議に対する支部組織の役員会と地域サミットとの関係を探る議論を続けて行くことになった。

 

AG2017の企画書が実行委員会から出された。支部大会が創設されAGは存在自体が微妙な立場であるが、根本的な問題も含めて次年度のテーマである「(仮)建築的思考」について意見交換する。私は地域会の立場から時期的な問題とテーマ設定について意見した。それにしても今回のテーマは70年代的で非常に懐かしいような気分にもなったが、昨年までの3年間のテーマであった「建築はともだち」との落差はナイアガラ瀑布級である。

 

ARCASIAと全国大会の委員会は各々本部と支部扱いなので、最終的には合同で開かれることがあるのだろうが、とりあえず地域会として推薦した山口満さんが所属するのは、支部に設置される全国大会の方になりそうである。

 

次年度予算案については時間が全く足りなかった。資料で提出された今年度の収支は1000万円の赤字で、次年度の予算は900万円の赤字になっている。これが実際行われると支部の余剰金は枯渇することになってしまう。こんなことが許される筈もなく、31日に行われる役員会を通るとも思えない。この日は中途半端に時間切れとなったが、後日メールを通じて様々な意見が交わされることになる。

 

新春の集い:第1部は中村拓志さんの講演、第2部はARCASIA大会に向けて

中村氏はARCASIA建築賞を受賞した「狭山の森礼拝堂」と前作の「狭山湖畔霊園ホール」の概要とその建築的思考過程を丁寧に説明された。氏の作品は1つ1つが非常に造形的で強く印象に残るが、悪く言えば一貫性がないようにも思える。今回解説された2つの作品も形態的にはかなり異なった印象を与えるが、内部空間は木の構造材の見せ方だけでなく共通の思想が伺え、一対の建築として構想されたのが理解できた。私のような新しい建築を解せない人間にも非常に説得力のある講演だった。40代の建築家としてはすでに傑出した存在だが、必ずや日本を代表する建築家となることだろう。

 

第2部は六鹿会長、藤沼支部長、高階国際事業委員長によるUIA2017とARCASIA2018の2つの国際大会へ向けてのアピール。UIA大会は韓国で行われるが、2011の東京大会の返礼の意味もあるので奮って参加して欲しいとのこと。メインテーマは2018年のARCASIA東京大会について。招致の経緯と共に国際大会の意義、JIA会員の参加プログラムなどが説明された。懇親会は今年は所用で欠席した。

 

1月21日 

第2回長野県災害支援活動建築団体連絡会:今年度11月に引き続き2回目で通算3回目の5団体と県の連絡会議が行われた。

私の方からは17日の幹事会で出された要望事項を説明した。応急危険度判定は国の制度で、参加者への保険は被災自治体が掛けるよう法律で決められているが、住宅相談は法的には何も決められていないということである。交通費等の経費負担も他の4団体は承認しているのでそのままとなった。ただし、完全ボランティアということになるので「災害時における住宅相談業務に関する協定」という名称の「業務」には当たらないのではないか、と意見を申し上げ県が持ち帰って検討することになった。建築団体の他にも土木コンサルや弁護士等の団体との協定があり、整合性を計ったうえで結論を出したいとのことだ。また、被災自治体と5団体の住宅相談活動の間に「コーディネーター」が必要になるが、誰がその役割を担うのか、可能なら県に方針を決めていただきたいと要望した。

 

事務所協会でまとめている「被災地住宅相談のフロー」と「住宅相談マニュアル」及び「住宅相談受付票」の細部も検討したが、別途「(仮)専門者委員会」を設置し検討を重ねることになった。当会からは丸山監査役に就任を打診した。

今回の変更内容を事務所協会が今月中にまとめ、県の最終案を2月中旬をめどに作成することが決まった。協定締結は3月中を目標にしている。

 

1月25日 

まちづくり委員会 フィールドワーク〜信州産建築材活用現場巡り第2回〜

まちづくり委員会のフィールドワークで法人協力会員の山崎屋木工製作所さんを訪ねた。オーダー家具の製造販売から始まって、現在は県産材を中心に使用した木製サッシュの分野で注目されているのは皆さんご存知の通りです。山崎社長自らの案内で、CAD/CAMによる制作過程を実際に見せていただいた。3重ガラスのサッシュから木製防火戸や防火壁にも果敢に挑戦されている。最後に事務所で海外での動向から今後の取組を説明していただいた。最近の使用事例として清水委員長設計の住宅が紹介された。見込み80mmの高断熱木製サッシュは金額も決して安くはないが、地域材活性化の運動として応援したいと個人的に感じた。また公的な補助制度も利用しながら、新たな分野に挑戦し続ける熱意に感銘を受けた。

 

1月31日 

第3回支部役員会:20日の常任幹事会以降メールで頻繁に意見交換してきた、役員会で承認を得るための次年度予算の赤字縮小の詰めと今後の方針に関して役員会直前まで検討を重ねた。20日の時点で今年度約1000万円、次年度900万円の赤字見込みはそれぞれ500万円台、400万円台まで縮小された。来年度は更に圧縮するための考え方を提示し、今年8月までに抜本的な財政健全化案を策定する方針が示された。

おかげ様で来年度の活動方針・予算案は全員賛成で承認された。地域会予算案については、一部の地域会で赤字予算の上に繰越収支まで赤字になっていることが判明し、本部提出の締切までに修正することを条件に承認された。

個別に事務局に確認していた地域会が新たな基金が作れるかどうかだが、公益目的なら作ってもよいそうだ。災害時の支援活動に備えて決算時に少しづつ基金に積み増して行くことは可能になった。年度末の幹事会で協議していただくことになる。

 

 

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