JIA長野県クラブ「代表日誌」2018年6月

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

JIA長野県クラブ「代表日誌」2018年6月

JIA長野県クラブ 荒井代表より「代表日誌6月」が届きました。(2018年6月30日)

 

6月8日(金)

第43回長野県建築士事務所協会定時総会

建築士事務所協会の定時総会に来賓列席してきました。

これで建築三会の総会が全て終了です。総会にもそれぞれの色がありますが中でも一番きちんとしているのが事務所協会です。来賓の顔ぶれが県クラブとは全く違います。国会議員、県会議員、各団体の代表、一番の違いは県の建設部長が列席していました。これは知名度と言うのではなく信頼度の違いと考えるべきではないかと個人的には感じています。日々の活動で信頼を一つ一つ積み重ねていくしかないのでしょう。

 

6月13日(水)

第15回信州木材認証製品センター通常総会

信州木材認証製品センターの通常総会に来賓列席してきました。

平成29年度事業報告の中で認証製品の出荷数量が前年度に比べて若干減少しているのが気がかりでした。公共が1384.4㎥から1591.2㎥と増加しているのに対して民間が4724.0㎥から4022.2㎥に減っています。701.18㎥減ということです。住宅に置き換えますと、私の設計では35㎥前後使用していますから20棟減ということになりますが、普通の住宅はもう少し木材使用率は低いでしょうから30棟近く減ったと言うことになろうかと思います。JIA長野県クラブの会員が1棟ずつ県産材使用住宅を増やせば簡単に回復できる数字です。

 

総会の後、講演会が開催されました。『竹中工務店の中規模木造・木質建築への取り組み』~地域材の活用と実践~ 講師は竹中工務店の木造・木質建築推進本部副部長の宮崎賢一氏です。

売上高1兆3000億円のスーパーゼネコンに木質建築推進本部というのがあるのに驚かされましたが、創業1610年ということは大工から始まっているわけで木質建築にこだわるのも頷けます。

 

いま世界の潮流はウッドファースト、まず木材が使えないかを考えているのだそうで、現にヨーロッパでは20階前後の木造建築が実現していて、来年には35階の高層と呼べるものまで作られるとのこと。竹中得意の燃エンウッドとCLTを使って木造木質建築の普及と国産材需要拡大に努めているのだそうです。2018.4に国産材活用宣言企業の認定を取得しています。無垢材ではなく基本的には集成材としての使用が多くなるのは当然ですが、スーパーゼネコンがこのような動きを見せれば、国産材の使用量は一気に伸びていくことが考えられます。一方で日本人には無垢の材木を使った木造建築のほうがなじみやすいとも言えます。地方の建築家は住宅で地道に無垢材を使い、一方で木質高層建築が進むと言う役割分担が出来るのかもしれません。

 

6月15日(金)

第12回松本安曇野住宅建築展企画会議

7人のJIA長野県クラブの会員で始めた建築展も、今はJIA以外の建築家も参加して今回は19人で開催します。建築展のメンバーは地元松本・安曇野で環境・風土・地域・人々の生活と正面から向かい合って建築を作り続けています。そして毎年松本市美術館で自分たちの活動の成果を発表してきました。単なる個人の作品の発表の場ではなく、毎回テーマを決めて建築家ならではの空間演出をしてきました。

 

松本市美術館では近年、建築を芸術の一分野として積極的に取り上げ始めています。3年前には「戦後日本住宅伝説」という住宅建築を集めた展覧会を開催しました。地方都市の美術館が建築を美術作品として取り上げるのは極めて珍しいことで、松本安曇野住宅展の長年にわたる活動が、学芸員が建築に目を向けるきっかけになったものと自負しています。また今年私が掲げているJIA会員以外の建築士との交流という意味でも松本地域の重要な活動になっています。

 

今年のテーマは「私の小屋」(仮)になりそうですが、初の提案型展示になりそうです。同時開催の子供のためのワークショップ「インスタント建築」は竹を使ってドームを作る予定ですが、ワークショップは美術館の承認を受けないと決められません。

 

6月19日(火)

第12回長野県林業総合センター研究成果発表会

長野県林業総合センターにおいて5人の研究発表がありました。

12回目と言うのにこの様な発表会があることを今年初めて知りましたが、内容は関係者に向けたものでいままで建築家は部外者と考えられていたのかもしれません。今回案内が来たということは私たちも林業関係の仲間であるということをようやく認知されたと考えるべきなのかもしれません。

【発表内容】

・試験研究施設とこれからの試験研究に向けて

・30年経過した木製遮音壁の性能評価と土木利用

・スギ大径材から得られた梁桁材の乾燥、強度試験

・カラマツ大径材を使うメリット

・木材抽出成分(精油)の有効活用について

 

それぞれ質疑込みで発表時間が20分ということで、少なすぎたかなという印象です。発表者を半分にしてもう少しじっくりと発表させてあげたほうがこちらも、もう少し深く理解できたのではないかと思い残念です。

 

木製遮音壁は30年も経つのに、いまだ試験採用で本採用ではないというのに驚きです。オーストリアの高速道路の遮音壁は15年前に見たときにはほとんどが木製でした。日本は遅すぎです。スギは芯持ち材でも芯去り材でも性能がほとんど変わらないのに対して、カラマツは全く違うことを知りました。一本のカラマツには未成熟材(中心部)と成熟材(周辺部)があり、変形が少なく強度も強い成熟材を使うべきで芯去り材が良いということがわかりました。木材に関してまだまだ知らないことが多く、もっともっと勉強していかなければなりません。

 

6月20日(水)午前

松本市美術館と子供のためのワークショップの打ち合わせ

美術館担当者も竹のワークショップに興味津々で、上司の許可が出れば広報松本に掲載されます。本番は9月8日(土)ですが、その前に原寸大の竹のドームを作って、子供たちに危険が無いかのチェックが必要となります。心配なのは小口の棘です。

 

午後 : JIA長野県クラブのまちづくり・地域産材委員会と交流委員会がほぼ同時刻に開催されました。どちらの委員会も第一回のためたくさんの会員が出席して下さいました。失敗したのは同時刻に委員会を開いたこと、私の体は一つしかありません。

 

夕方 : JIA長野県クラブ 第一回幹事会

新代表としての初めての幹事会でした。スムーズな進行とはとてもいえる状況ではありませんでしたが、これから徐々に慣れていくつもりです。幹事の皆さんこれからもよろしくお願いします。用意された承認事項はすべて承認されました。

 

6月22日(金)

全国学生設計コンクール2018会場設営

午後一番から会場の設営が始まりました。作品がどんどん搬入され会場は凄い熱気です。今年は模型の大きさを厳しく制限したため、大きくはみ出すトラブルは避けられましたが、一部の学生は模型の数を減らして対応せざるを得ず、大変不服そうです。この問題は委員の間でも賛否両論で、自由にすべきという意見もあります。しかし大きな作品は首都圏に近い学生に多く、地方の学生は輸送のことも考えて規定内に納まることが多いと言う傾向にあることを考えると、公平さを考慮すると厳密に行った今回の展示は正しいと思います。

 

夜はWeb会議でしか合えなかった全国にちらばる会員が1年に一回直接あって話し合える機会です。お酒も入って毎回大変な盛り上がりです。

 

6月23日(土)

全国学生設計コンクール2018公開審査会

全国の地方審査を優秀な成績で勝ち抜いてきた作品ばかりですから大変レベルの高いコンクールです。
今年の審査員は、竹山聖(委員長)彦根アンドレア、平賀達也、中山英之、大野博史 意匠設計だけでなく構造やランドスケープの設計家も審査員に居るのがこのコンクールの大きな特徴です。
今年は一次審査で候補に挙げられた作品が、集中するのではなく分散していたということです。その数なんと30作品。それだけ実力が拮抗していると言えるわけで、だれが入賞してもおかしくないレベルでした。投票の結果、1次審査通過は14作品となりました。

最終審査結果は次の通り。

 

☆金賞:高知工科大学の西田匠 「建造物による風景の時空間化」
ダム湖に沈む風景(橋や川や林)を円錐形の構造体を差し込んで可視化するというものです。
ダム湖にぽっかりと穴が開く風景はなかなか良いのではないかと思います。実に骨太の建造物で、イメージに偏りがちなコンクールの中で異彩を放っていました。審査員ばかりでなく私達スタッフの間でも一番人気のあった作品です。

 

☆銀賞:東京都市大学の高橋万里江 「建物語」
作品名からも想像出来る様に一番私的(詩的)な作品で金賞作とは正反対の作品です。
言語と物語の面白さと建築を結びつける試みなのだそうです。昔話の展開を建築の記号学を用いて空間化しています。記号化が一番難しい部分だと思いますが、手を抜かず数多くのパターンを作り出した努力に好感が持てました。
それらをどのように建築物として成り立たせるのか?非常に難しい仕事で完全に成功しているとは言いがたいのですが、立体的な構成が結構おもしろく楽しげな空間になっているところが評価できます。

 

☆銅賞:長岡造形大学の大島世礼菜 「凍み渡り」
豪雪地の新潟県津南町に計画された子供が年間を通じて遊べる施設です。
作者は「雪象」という言葉を使っていましたが、子供のときからの記憶をたどって雪の心象風景を描き起こし、それをもとに子供のあそび空間を作ったとのこと。
イメージと構造物とが両立している素晴らしい作品でなによりもプレゼンテーション図面が美しく引き込まれてしまいました。

 

私の個人的な一押しはこれ 富山大学の福井美瑳 「地と智の循環」
残念ながら入賞は出来ませんでしたがメガロフロートに保小中一貫校をつくり過疎に悩む離島を活性化するという案です。舟で曳航できる最大の大きさに4分割された敷地は組み合わせ次第で様々な形に姿を変えること、どこにでも移動できること。
物凄い発展性を感じてしまいました。一離島にこだわるのではなく琵琶湖全域でこの取り組みを行えば、様々な施設を作ることが可能となります。プレゼンテーション能力も高く、可能性を一番感じた作品で、今回の一押しです。

 

受賞者全員で記念撮影です。長野県代表の平岡君は残念ながらこの中にはいません。しかし二次審査を通過し最終選考まで残ったのは立派です。

 

 

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