窓の無い部屋より

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

窓の無い部屋より

「窓の無い部屋より」(2007.03.15) 荒井茂明(夢窓建築研究室)

 

先日来、右上がりの高速道路の先端で数回事故が繰り返され、マスコミを賑している。

危険だと1車線に変更され、ガードレ-ルが増設された。造られた物には常に不完全さが内包され、心配事の種は拭い切れない。都市はジャングルより危険だ、子供を握った手は決して離せない。それは微妙なバランスの上に成り立っている。

目に見える自然以外の全ては、人によって整備され造られたものであるという事実。仮に地球に私一人であったら、賢さも馬鹿さ加減もなく、憎しみも嫉妬も無いであろう。地球に私さえもいなかったら、鐘楼の鐘が響いてもそれは無音だ。人の目は一部分の光と左右200度、上下60度領域だけしか認識できず、聴覚は20hzから20、000hz間を帰来する。そして臭覚に至ってはその大半を失いつつあるようだ。

 

閉鎖された技術系の中で世界を認識する事は難しい。右上がりの急カ-ブは人間の目(あるいは脳)の仕組みを超えているようだ。無意識の視覚センタ-は中央よりやや下、左に位置している。それゆえ、左カ-ブは易しくとも右カ-ブは少々曲がりにくいと感ずるはずである。

 

「自然は、我々の認識可能な範囲内での自然でしかない」4000年前にギリシャ人が気づいた世界観、教科書の言葉と思ってはならない。文化と文明が発展しても、牛車が車に変わっただけである、中身は旧態依然の人々が住みついている。

 

2-3年前より縁あって機械設計の基礎を教えている。歯車一つを取り上げてみてもインボリュ-ト曲線がそのまま使われ、当に其の事、其の一つの原理が文明の基礎を築いているという事実。宇宙の原理を物を媒介として出現せしめるという事に、今更ながら驚きを隠せない。付け加えるならば、縦に作られた体系は他の体系と不干渉だ。宇宙の原理を根本に据えるとき体系の離散はあまりにも心もとない。長いこと窓と暖房の無い仕事場でPCに向かっていると、心は遥か彼方を飛翔する。

「コラムの掲載を仰せつかったのですが、文章を書く事と女性と話をする事が大の苦手(背中はタワシで掻くため1月に1個消耗しますが-笑)乱筆で申し訳ない限りです」

 

 

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