夏のセミナーの報告 ④(サンタ・キアラ館)
2019年08月02日
JIA長野県クラブ 正会員建築家 池森 梢さん(萌 建築設計工房)から『 夏のセミナーの報告 ④ 』です。
【 茨城キリスト教大学 キアラ館 】7月20日(土)
設計者:白井晟一
構造:鉄筋コンクリート造 地上2階建
延べ床面積:約1,000㎡
ノアの箱船を彷彿させる赤いレンガの外観をもつ礼拝堂≪サンタ・キアラ館≫
1974年に“孤高の建築家”と評される白井晟一(1905-1983)がアッシジの聖フランシスコの協力者であった修道女、聖クララが生きた時代の修道女をイメージして晩年に設計した建物です。「建築は精神の構築である」という白井氏の信念の表れであるこの建築物は、建築学的にも非常に高い評価を受けています。
半地下の礼拝堂を持つキアラ館は、決して明るい空間ではなく、むしろ薄暗さを感じます。闇を含んだ光によって表現された雰囲気は「死」では終わらない天上の世界を意識させられる建築空間です。木と石で構成された礼拝堂は秩序立った精神を現しているかのようであり、修道士がお互いに呼び掛けあっていた「メメント・モリ」、すなわち「汝の死を覚えよ」という言葉が聞こえてくるような聖なる光の空間です。
私が初めて白井晟一の作品を体感したのは、大学時代の松濤美術館。
エントランスに入った瞬間、グッと心をつかまれてしまいました。
今回のキアラ館は、スケール感・素材・光の構成がとても柔らかくあたたかで、かつ、凛とした空気が清らかで気持ちが良い空間でした。ホールの小さな吹き抜けや、ガラス張りのトイレなど自由で伸びやかな思考を感じることができ、忘れていた感覚を呼び戻してもらいました。建築は楽しい!
↑建物のスケール感がわかりますか?入口の庇は手が届く高さです。
↑建物の裏に回るとガラス張りになっています。なんと内部は女子トイレ!とっても明るい清潔感あふれる空間です。
↑屋根が壁のレンガと連続して同じ材料で構成されています。とても大胆な納めです。
綺麗です。
↑礼拝堂、照明あり
↑礼拝堂、照明無し
適度な薄暗さが心地よいです。制限された自然光が「光」を再認識させてくれます。
↑これはなんだ?
↑2階から見るとこんな感じです。なんともかわいい。
最後に「愛の鐘」?を鳴らしました。(笑)
ありがとうございました。