茶の間を見直しませんか?

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

茶の間を見直しませんか?

「茶の間を見直しませんか?」(2010.09.15)  川上恵一(かわかみ建築設計室)

 

昨今の住まいは家族生活の豊かさを求めてリビングルームという家族団欒の場を中心に作られているのがほとんどです。当初はイスに座ってくつろいでいますが、いつの間にかリビングの床に夏は卓袱台、冬はこたつを置いて座っている姿をみかけます。

 

私たちの国は開国以来、西洋の真似をしてほぼ100年。リビングルームも定着したかに見えますが、この場所だけが高い天井と広い板の間となっていて、そこにピアノを持ち込んでカーペットを敷いてコタツに座っている姿はなんともなじまない光景です。

 

ところで、日本は世界一の長寿国ですがそのわけは茶の間のおかげでもあります。毎日座ったり立ったりの何気ない動作が体力トレーニングになっていました。その際、目線やしぐさを通して親からの躾も受け継がれてきました。

 

また日本人は家づくりをする際、近くの手ごろな木を使って周りの人々がお互い助け合って狭い家を造って大切に守ってきました。高温多湿の風土と環境の中で育まれた家づくり。リビングに当る居間は、最初は土間にムシロ敷き、次に板の間、さらにたたみを敷いてその上に座って生活をしてきました。

 

私たちがいわゆる『茶の間』と呼んでいる狭い空間です。この場所をとても合理的に便利に使ってきました。茶の間は押入と小道具さえあれば1部屋で少なくとも5つもの役目をはたします。リビング・ゲストルーム・ダイニング・ベッドルーム・勉強部屋などです。部屋の稼働率も5倍です。掃除も簡単です。すわり心地は勿論、清潔で健康でお金もかかりません。一石5丁の好都合な茶の間のよさを見直し、戸建にもマンションにも『茶の間』を復活しませんか。世界に自慢できる独特な文化なのですが・・

 

 

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