県立武道館建物見学、技術交流会に参加しました

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

県立武道館建物見学、技術交流会に参加しました

JIA長野県クラブ 正会員建築家 鈴木敏之さん(キビト建築設計)から、建物見学会・技術交流会 in 県立武道館の報告です。(2020年10月13日)

 

10月13日に行われた佐久市にある県立武道館の建物見学・技術交流会に参加しました。(正会員建築家17名、法人協力会員と工事関係者14名、事務局の計32名 参加)

 

講演は設計・工事監理者である、環境デザイン・宮本忠長建築設計共同体から、環境デザイン研究所の古藤田茂氏より、プロポーザルから工事監理までの話や施設の話をしていただいた。

 

<特徴的なエントランスキャノピー>

 

<古藤田氏による講演>

 

<環境デザイン研究所のリーフレット>

 

着工時や竣工時に事務所で制作するリーフレットを基に解説があり、プランニングでは、仙田満氏の思想である「遊環構造理論」を応用していること、地理的条件や周辺施設との連携からゾーニング検討をしていること、武道の聖地となる中核的拠点としての役割を考えたことなどを紹介していただいた。

 

また、床材の選定では針葉樹、広葉樹の8樹種をリスト化して検討したことや、エントランスキャノピーが募集要項の面積に入っていなかったことから、予算との兼ね合いや用途の必要性について発注者との協議に苦労したこと、実施設計時に多目的利用の要望から、ホールとしての機能を持たせるため、プロセニアム風のステージを設置し、天井の高さは9m平坦から12m段天井にしたことなどのエピソードを聞かせていただいた。

 

会員からも多くの質問があり、地域材の利用については、随所に利用されている県産木材について説明いただいた。県産木材は、合計で600m3使用されている。

 

  

<主道場ハイブリッド架構>

 

<主道場赤松床材>

 

<北側の石庭>

 

<中庭の木製デッキ材>

 

講演から建物見学に移り、見学中やその後、施工に参加した協力会員からの技術的な説明を頂いた。

見学中、征矢野建材(株)さんから道場床材、(株)本久さんと木商さんから中庭のデッキ材、(株)塚田造園さんからは、外構石積みの説明があった。

 

主道場の天井唐松集成材・スチールのハイブリッド構造は、雰囲気も良く、特徴ある空間になっている。大空間のハイブリッド構造は多様な創意工夫のある組み方が登場する期待感があり、今後も楽しみだ。床は安曇野産赤松無節材で、面取りなし・厚み18mmは今回用の特注とのこと。デッキ材は自然木積層材、越井木材工業のマクセラムを利用している。

 

<柔道場>

 

<剣道場>

 

柔道場、剣道場も機能的で雰囲気が良く、その周りには「遊環構造理論」を応用した回遊できる廊下が接続されている。施設外観の特徴となっているキャノピーのスロープは、観客を2階席に誘導するのに役立っている。各諸室の位置がわかりやすく、全体プランの良さが利用勝手に有効に働くように思う。

 

見学後、(株)角藤さんから地中熱ヒートポンプ施工について、そのシステムや省エネ効果について説明をいただき、本施設では、地中熱交換器を埋設長100m、28本を施工したことや、ZEHやZEBの国補助金の予算が増加していることから、地中熱利用の需要も増やしていきたいとのこと。

 

<地中熱交換器(Uチューブ)>

 

綿半ソリューションズ(株)さんと元旦ビューティ工業(株)さんから、屋根工事について丸桟瓦棒葺と横葺を利用し、綿半としては県内での受注面積が最大であったこと、工期の厳しい中、職人の手配や4寸勾配での施工が困難であったことなどを、詳細図の説明も交えていただいた。

 

<屋根施工の技術説明>

 

会員からは、地中熱利用へのコストに関する質問や、屋根の大きさから長尺ものの製作や扱いなどについて質問があった。

 

<施設全体を貫くメイン通路とコニンジャハウス>

 

プロポーザルで選ばれ、県産木材を多用した施設は見応えもあり、設計・工事監理者から、専門工事施工者の話に至るまで充実の内容でした。見学・技術交流会を開催とご協力いただいた関係者皆様に感謝します。

 

<集合写真>

 

 

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