この年になって・・・ その2

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

この年になって・・・ その2

「この年になって・・・ その2」(2007.06.01) 川上恵一(かわかみ建築設計室)

 

設計を生業としている者として景観やまちづくりを考えない人はいないだろう。

松本平も周辺に高層マンションやハウスメーカーの家が建ち並び続けている。今まで目になじみのある古いものがいつの間にか壊され大きく新しいものに取ってかわるサイクルが加速している様は景気回復という名のバブル再来の様相である。

 

以前より居心地の悪さが増していると感じるのは私だけではないだろう。私個人のことでも仕事は減るし工務店はつぶれる中で思うことは進歩と言う名の退化現象を指をくわえて見ているだけでいいのだろうか?松本を訪れる者は「お城があり、水や空気がきれいで、山が素晴らしい、まさに自然豊かな歴史的文化都市で好きだ」と皆がいう。

 

ヒトは安住のねぐらを求めている。他人よりいい場所で安全安心、便利で快適で個性的でと自己実現の夢を描く。その結果が新しいだけのフツーのマンションや無国籍の新住宅が乱立し、一部の住む人にとっては良くても圧倒的多数をしめる見ているものにとっては失望で寿命が縮む思いである。このまま行けば長寿県日本一も返上せねばなるまい。

 

いったい都市とは、人々が集まって住むとは、人々の関わりはどうあるべきか。人付き合いを下手にするだけの個室などの自分だけの場を作って人を疑い安心しようとする行為は、都市が汚くなることと親子が殺しあって平気でいることと関係が無いわけがない。地獄の黙示録のシナリオが予言よりはるかに早く現実に近づいている感があり恐ろしくなってくる。

人生が長いと思っていた錯覚から目が覚め、余生あといくばくもないという実感の中でにあってこれから自分はいったい何が出来るだろうか?今後も「仕事を通じて社会に貢献する」とするなら命が尽きるまで少しでも居心地が良い場所をつくり続けていくしかないのかなぁ…。

 

 

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