建築家って何?
2011年06月20日
「建築家って何?」(2011.06.20) 西澤広智(㈱宮本忠長建築設計事務所)
6月3日、国会でまた茶番劇がありました。菅首相と鳩山元首相が「言った言わない。ペテン師だ」との発言に唖然とし、どっちもどっち、そんなこと言っていないで政治家の本分を全うしろよと国民のみんなが思ったことでしょう。
政治家・大臣は人の出世の代名詞、「末は総理大臣」と親も子供も憧れ、夢に見ていた時代もあったのにいつからこんなになったのか。戦前の二大政党の破たんに類似していて不安を感じる人もいるでしょう。
突然ですが、建築家と聞いて一般の人はどのようなイメージを抱くのでしょうか。まだ今より景気の良いころ、ドラマで田村正和が演じたかっこいい建築家? 建築士とどうちがうの?
フランクロイド ライト、ル コルビジェ、ガウディーは、誰もが建築家と言うでしょう。工務店やメーカーの一般的な住宅では飽き足らない消費者を目当てに、民間営利企業が勝手にスタイリッシュでかっこいい建物のイメージ戦略で「建築家デザイン住宅」、「登録建築家」(JIAの登録建築家ではなく)などとブランドのように建築家という呼び方を使っている場合もあるでしょう。
5月31日、JIA25年賞の受賞式(私共の事務所で設計監理した長野市立博物館他10作品が本年受賞)の前に行われたJIA通常総会に参加しました。総会では様々な会員の意見が活発に飛び交う中、芦原会長から「JIAの登録建築家と日本建築士連合会の総括設計専攻士制度との一体化も具体的なステップに入る」との話がありました。一部の会員からは、芦原会長の「(仮称)統括一級建築士」という名称に異議の声が上がり、あくまでもJIAが目指すのは「登録建築家」ではないのかとの意見が出されました。JIAの芦原会長と、日本建築士連合会の藤本会長が行おうとしていることは、様々な専門的な技術者等を統括し、プロジェクトの目的を達成するプロフェッショナルとしての建築家の職能を国家資格とするための実践的手法の検討であり、私は推進すべきと思っています。
のホームページで建築家の定義として概略、「学問的に教育され、公正かつ持続可能な開発、国民の福祉、また、空間、形態、歴史的文脈の見地からの社会の居住スタイルの文化的表現を擁護することに責任を負う者・・・」とあります。 なんだか難しい話で、一般の人たちには理解しにくいでしょうが、「建築は、人間一人ひとりの¨生活¨の幸せのためにつくられるもの」それは「一個人としてだけでなく、社会共同体としての公益的幸せも含めたもの」で、こういった視点で仕事ができるものがプロフェッショナルとしての建築家であるのだと思います。
ヨーロッパなどの多くの国では、伝統的な歴史文化を理解し国家的に認められた建築家でなければ、建物のリニュアルもできないと聞きます。建主の個人的欲求や、建築家のエゴによる、利己主義の建築は許されないのです。その地域の文脈を読み取りそれを醸成し今を表現する、そしてその建築意図、理念を常に社会に説明し理解される必要があるのです。
私は冒頭、政治家について嘆きました。建築家も、建築4団体色々な考え方の違いはあるでしょうが、会のことばかり考えず、各会の使命を整理し名称に拘らずとも、建主と施工者から独立中正の立場で、本来建築家の持つ職能を国民に理解していただき、社会制度の中で確立する道筋をつけることを前向きに進めるべきと思います。
建主が、しっかりした理念のある建築家に頼むのが当たり前の社会にして行きたいものです。まち全体として無個性な地域が増えてきてしまった日本の景観を、日本人のアイデンディティー、感性がにじみ出る、心地よいものにしていきたいものですね。 そんな社会になったら、自ら建築士、建築家という名称に拘るのではなく、真摯に建築家の本分を全うしている人に対し、社会が「建築家」と評するのではないでしょうか。