新潟研修旅行の報告⑤(新潟芸術文化会館(りゅーとぴあ))
2025年07月07日
JIA長野県クラブ 正会員建築家 勝山敏雄さんから『新潟研修旅行の報告⑤』です。
【新潟芸術文化会館(りゅーとぴあ)】
1992年公開設計競技において、長谷川逸子案が採用され、1998年に竣工している。
主要な施設はコンサートホール、劇場、能楽堂と芸術を象徴するものとなっている。2階レベルをロビーレベルとし、周辺の施設を繋ぐように公園と歩行者空間が連続しており、このレベルですべての施設を行き来できる。建物の2階ロビーは心地良い広々とした吹き抜け空間で、外皮はダブルスキンのDPGで構成され透明感があり、外と中が連続するゆったりと時間をすごすことのできる空間となっている。
アリーナ形式の音楽専用ホールは1800席を超えるにもかかわらず、非常にコンパクトに設計されており、ステージと客席の距離が理想的であると感じた。一度はここでの演奏会に訪れてみたいコンサートホールである。劇場も本格的なプロセニアム形式の劇場で、客席の上部に能舞台を設けるという建築的な解決と最上階に能舞台を設けることで、中庭や能舞台と背面がオープンになることで竹の林をバックにすることができる工夫も行っている。新潟佐渡に伝わる能も伝えることのできる場を設けていることや能以外の利用も可能となっている。
まず、この施設で感じたことは市民に愛される施設で活き活きとした雰囲気を感じた。これは長谷川逸子が2年にわたる設計から、脈々と連続していることに所以する。公共施設を作り上げていくときの取り組みを評価する。特定の代表でテーブルを囲むのではなく、あらゆる熱意のある人が参加できるようなフェイス・トウ・フェイスの打ち合わせの場を設け、縦のヒエラルキーのない組織を創ることで信頼関係を作り、ソフトとハードの一体化を図ることができたのではないか。
結果として運営組織、企画組織、支援グループ、ボランティア組織、顧客ネットワーク、オープニング企画まで、市民と専門家との共同作業で進めていったプロセスが今も生き続けていると感じた。この市民参画のプロセスがこの公共建築が人々の生活の一つの場であり活気のある活動がし続けられている大きな要因であると感じた。