新潟研修旅行の報告⑧(ナミックステクノコア)

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

新潟研修旅行の報告⑧(ナミックステクノコア)

JIA長野県クラブ 正会員建築家 山口 満さん(㈱山口設計事務所)から『新潟研修旅行の報告⑧』です。

 

【ナミックステクノコア】 山本理顕設計工場

「地域社会圏」。原広司先生と一緒に世界中で集落調査を行った山本理顕先生が2008年頃に発表されていたお考えです。※注1) 注2)

ナミックステクノコアは、エレクトロケミカル材料の研究・開発、製造、販売を事業内容とするナミックス株式会社の研究所です。

設計は山本理顕設計工場、施工は大成建設、竣工は2008年10月、用途は研究所、敷地面積21,367.37㎡・建築面積6,894.97㎡・延床面積8,844.83㎡、構造はS造、階数は地上2階(4層構造・2階建て)です。

日本海海岸から1km程南に位置し、工業専用地域内に建っています。 現地に着いてまずマルチファンクションプラザに通していただき、ナミックス株式会社の社員の方から詳しい説明をいただきました。概要は、

① 空間づくりも会社理念の一角で、感性を刺激し創造性・感受性を高める建築を目指した。

② 設計者選定は設計競技(コンペ)とすることを役員で協議した。研究所でどんな未来を作っていきたいか、未来への広がり・可能性から決定した。

③ 建物の良さとしては見学者や地域の人から一目置かれること、悪さとしてはガラス(広さ・曲面)・夏の暑さ冬の寒さ・特注品なので修繕に費用がかかること。

④ 見学中に伺った話ですが、「建築好きが会社に多いわけではない。」「この建物は目的通り研究の感性を刺激し創造性・感受性を高めている。」とのこと。

その後、基壇のような1階(実験室が集まる部分)の廊下を写真撮影厳禁で見学させていただき、さらにエントランスにある階段でM2階に上がり見学させていただきました。残念ながら2階(食堂・オフィス・ミーティングルーム)は見学できませんでしたが、M2階の光景は圧巻でした。

 

 

 

 

山本理顕先生の「地域社会圏」というお考えは、【「1住宅=1家族」単位に代わって、社会を構成する何らかの基礎単位のようなもの】であり【国家の運営システムによって消えてしまった400人(/ha)程度の居住単位】ということだそうです。

30年ほど前、アメリカ合衆国ウィスコンシン州ラシーンに建つフランク・ロイド・ライト設計のジョンソンワックス社を訪れたことがあり、①キノコのような柱が似ていること、②ミシガン湖に注ぐルート川に開かれた交易所がラシーンの原点であること、③ウィスコンシン州は「酪農の国」であること、などから、「風土的共通性」があるのかなと思っていましたが、どうやら関係ないようです。

しかしながら、日経アーキテクチュア2009年2月23日号※注3) p.24に掲載されているコンペ案を見ますと、当初はジョンソンワックス社事務所棟とよく似た空間構成であった案が、【実験室とリラックスする空間の場所を明確に別けた方が良い】ことから、M2階を設けて1階と2階が別れていき、その結果、キノコ状の柱が各フロアを貫通してM2階(外部)にむき出しになるという、ジョンソンワックス社とは異なった空間構成になっていったことがうかがえます。 実験室の単なる集まりではなく、M2階や2階によって【社会を構成する何らかの基礎単位のようなもの】が建物全体でつくられているのかな、と感じました。

 

 

注1)山本理顕=【巻頭論文】地域社会圏:新建築,第83巻15号,p.37~41,2008年11月号
注2)山本理顕=「地域社会圏」という考え方:2009東西アスファルト事業協同組合講演会講演録「私の建築手法」
https://www.tozai-as.or.jp/mytech/09/09-yamamoto00.html
注3)ナミックステクノコア:日経アーキテクチュア,No.894,p.16~25,2009年2月23日号 

 

 

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