市民に信頼される建築家
2012年04月09日
「市民に信頼される建築家」(2012.04.09) 赤羽吉人
震災から1年が経過し復興は緒に就いたばかりです。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
3.11を契機に、これまでのように経済活動を最優先していては、持続的な人類の幸福は望めないと多くの人々が考え始めているように思います。社会の基盤を通貨価値を尺度とする経済発展に置くのではなく、幅広い社会資産の有効活用を通じて、よりソフト面に重心を置いた新たな価値観で支えられた社会を実現しようとする試みです。
そのためには復元力を持ちかつ持続可能な社会をつくることが大切で、建築家としても、地域に密着して息の長い活動をし、建築の社会資本としての役割と効能について社会にきちんと説明することが大切になります。
これからは今にも増して、専門家として地域社会への説明責任に耐えられるかということが、建築家に課せられる重要な課題になってきます。
建築家は建築主の利益と社会の利益をバランス良く実現する社会的役割を担っているはずです。建築家が社会にとって必要とされる背景にはそういった役割への期待があります。
しかし現実はどうなのか。私自身、建築主に対し、次世代に引き継げる資産を残すことは今の時代を生きる私達の責務であると理解してもらう努力を積み重ねているだろうか?と自問し続けています。
昨年秋のUIA東京大会が成功裏に開催されたことは大変喜ばしいことですが、その大会を経て私たちが学んだことは、地域社会の中で建築家の存在はまだまだ道半ばであるという現実であったように思います。ここ信州の地においても、建築家はまだまだ市民から遠い存在であるかのように感じられることが多々あります。
しかし悲観する必要はないと思います。建築をつくっていくことを通して、暮らし、まち、地域、そして地球を豊かに築き上げる使命を帯びた者として自覚し、次の時代に向かっていく姿勢が明確に示されていれば、その先に必ず地域社会と共にある建築家の姿が見えてくるとの確信は得られたと思います。
この社会には、建築家にエールを送り続ける多くの人達が居ることも確かです。そういった人達との連携を強めながら、ひたすら地域社会に向けて自分達の情報を発信し続けることにより、次の何かを見つけられると思います。大切なことは、本当に市民に信頼される専門家でない限りは、建築家の今後というか、職能の確立はないということです。
4年間、JIA長野県クラブの舵取りを仰せつかってきましたが、無事川上さんに引き継ぐことができてほっとしています。もう暫くは支部、本部での役割が残っていますので、できるだけホットな情報を皆さんにお伝えすることと、地域のニーズを支部、本部に伝えることに力を注ぎます。