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日本建築家協会JIA長野県クラブ

JIA長野県クラブ「代表日誌」2019年7月

JIA長野県クラブ 荒井代表より「代表日誌」2019年7月が届きました。(2019年7月31日)

 

7月5日

『事務所協会松筑支部のまちづくり委員会』

松筑支部では委年毎に士会と事協が交互に景観シンポジウムを担当しており、今年は事協の担当となります。僕は平成3年よりまちづくり委員を途切れることなく令和まで続けていますから、現役では最長記録を持っています。

 

本年度は女鳥羽川界隈をテーマにしたいとの委員長発表があり、これから活動を開始することになります。高齢化が進む事協にも、二世社長が加わり始め若返りが進みつつありますが、問題は皆さん本格的にまちづくりの作業をしたことが無いということです。口はかなり達者ですが実際の作業に入った時にどの程度役に立つのか、御手並み拝見と行きたいところですが、最終的には手伝わされるのでしょうね。

 

7月6日

『開智学校国宝指定記念講演会』

松本市立博物館で開催されました。驚いたことに超満員でした。講師は学芸員の遠藤さん。

 

立石清重が東京に数回出かけ、どんな建物を見学し参考にしたのか。開智学校のデザインの特徴は何か。どんな教育をしていたのか。多岐にわたる話を穏やかな口調で話してくれました。

国宝に指定された決め手は、建物のデザインだけではなく、教育の資料が大量に保存されていることが評価されたのだということです。皆さんが見学に来たときには、荒井がご案内します。

 

7月19日~20日

『夏のセミナー』

今回は研修旅行を兼ねて千葉、茨城方面への一泊バス旅行を行いました。

中国木材の見学がメインということで長野県クラブ会員以外から、林務部の久保田さん、建築士会の久米さん、中里さん、北村さんが特別参加して下さいました。

 

岡谷ICを5:15に出発し佐原着が11:00

モダン和風の食堂、千与福での昼食後 各自で小野川沿いに古い建物が建ち並ぶ街並みを見学しました。小野川沿いと直行する道筋が重伝建に指定されており、小規模ながら見ごたえのある町でした。ほとんどの建物が使われており生きている町といえます。

 

 

 

この町には伊能忠敬が婿入りして暮らした家も残っておりその前に掛かる樋橋からは30分おきに水が流れ落ちます。その音が「残したい日本の音風景100選」に選ばれているとか?嘘でしょ、こんな音が?

 

 

重伝建地区内では新築建物の外壁を板張り等にした場合、着色をせずに自然の変色を待つというルールがあるそうです。写真の建物も良い変色をしています。素晴らしい。

 

 

次は中国木材の工場見学です。会議室で概要を聞いた後、おそろいの緑のジャンパーを着ていざ出陣。

 

 

何もかもが桁違い、なんと1日に2000㎥製材するそうです。ちなみに長野県産材の昨年の生産量は年間で約6500㎥です。働く人数が少ないのにも驚かされます。

 

 

奥に見えるのが乾燥炉です。その数なんと176基。一極集中もここまでくれば立派です。安くしかもスムーズに流通させるにはこの方法が最適とは理解できるものの、県産材の生産現場との違いに唖然としてしまいました。

 

感心したのは廃材をバイオマス発電に利用しており、工場で使う電力は全てまかなっており余剰電力を電力会社に売っているとのこと。大規模だから出きる技です。東京と地方のようにそれぞれの特徴を活かした役割分担が必要になっていくと言うことかもしれません。

 

宿泊は海辺の大洗ホテル。信州人は海を見るとどうしてもテンションが上がってしまいます。

 

 

翌日はSANAA設計の日立市庁舎へ

ボールト屋根が連続した大屋根広場が特徴です。

鉄板の断面を上手に見せて、とても軽やかでリズミカルな大屋根を持つ外部広場を造っていました。相変わらず軽く見えることにこだわった建物で、大変綺麗な建物でした。ただ雨水の処理や塗装など、あと10年経っても今の美しさを保っていられるのか心配になりました。

 

 

次は同じくSANAA設計の日立駅です。

目いっぱいガラスの軽々とした建物でいかにも彼女らしい設計です。すぐ目の前が海だというのに、鉄骨がむき出し。すでにところどころ錆び始めています。塗装をすれば良いといえばその通りですが、公共建築と言うのはメンテナンス費用に関しても設計者は気を使うべきではないでしょうか。空調の負荷も気になります。市民の税金を使うのですから。どうも妹島和世は建築倫理上好きになれません。

 

 

次は僕が強引に見学コースに加えてもらった白井晟一のサンタ・キアラ館です。

30年ほど前アポなしで訪れ、守衛に追い返された因縁の建物。リベンジです。

当時はキリスト教系の短大で建物も数棟しか立っていませんでしたが、今は大学に変わり大変身を遂げていました。そんな中、サンタ・キアラ館だけは緑の木々の中に静かに建っており当時の雰囲気が残っていました。

 

 

1974年竣工ということは45歳ということです。外壁のタイルはところどころ変色はしていますが、それがかえって風格を感じさせる味となっています。手前に見えるのは庭師の道具、建物周辺を定期的に手入れしていることがわかります。

 

 

30年ぶりの夢が叶い内部にようやく入れました。

妹島和世とは真逆の世界です。光が最小限に絞られ木とレンガと石に包まれた空間は、大変穏やかで心が癒されます。空調設備は加えたものの、その他はほとんど手を加えていないとのこと。皆に愛され大切に守られてきたことが良く分かります。

 

次は真壁の街並みウォッチングです。町に近づくとやけに石屋が多くなりました。調べてみると真壁石という花崗岩が有名で、関東随一の生産地だったようです。

 

 

3班に分かれて見学。木綿で栄えた町と言うことで、立派な建物が建ち並んでいます。それもそのはず17.6haもの面積が伝建地区に指定されており、その中に登録有形文化財が49軒もあるのです。よほどお金があったのでしょう、屋根がやけに豪華で、軒裏に意匠が凝らされしかも隣とはどこか違っています。見栄の張り合いですね。

 

 

 

最後に渡辺、木下、新谷三人組の設計、真壁伝承館を見学しました。あまり期待していなかったのですが、意に反してとても良い設計でした。伝建地区の景観に配慮した黒塗りの板壁の扱い、中庭、程よいスケール感の建物です。特に図書館が気に入りました。環境エネルギーの利用など設備面の配慮もしています。

 

 

 

今回の旅行最後の訪問地 

建築祭の講師に御招きした原田真宏の道の駅ましこです。

大断面の集製材が空間をどのように支配しているのか、本物を是非見たいと思っていました。結論から言うと、バランスがきちんと取れ、しかも程よく空間を分離している、構造と造形、機能がすべてバランスした優れた建物でした。

 

 

 

案内をしてくれたスタッフの山崎さんに「雨漏りはしませんか」と意地悪な質問をしてみました。すると「全くしません」と間髪をいれず返答が帰ってきました。スタッフが屋根に上って定期的に落ち葉を除いているのだそうです。

 

なるほど、この話を聞いてすべて納得です。スタッフがこの建物をとても気に入っているのです。だから展示物のデザインから、展示方法まで自分たちで考えているのですね。農産物の展示もおしゃれで、店舗全体が生き生きとしています。

建物にはスタッフをここまでやる気にさせる力があるのだと思うと、最近の悩みが少し解消されました。最後に素晴らしい建物の見学をさせていただきました。

 

7月24日

『事業委員会』

長野県クラブ事務局に集まり本年度初の委員会を開催しました。

まず昨年の反省。ギャラリートークは好評価で今年も引き続き開催することに決定。

会員作品展に関しては、建築祭からは一度外してみたほうが良いのではないかという意見が多数で、幹事会にて報告することになりました。講演会の講師の候補も数人上がりましたので、合わせて幹事会の報告事項とします。

 

午後は信州大学建築科の第3課題設計の好評会に参加しました。毎年JIAにも投票権をいただいておりことしも山田委員長が審査員として加わりました。

 

講評会の前に行われるミニ講演会では日経アーキテクチュアの編集者、森清氏が公演をしました。今注目すべき建築関係者は誰か!という内容でとても興味深いものでした。

 

講評会には19作品が並び、どれも力作ぞろい。長時間の審査の結果、

金賞が杉山翔太君の『新世界市場伸長計画』

大阪の新世界界隈を考えた作品です。社会性とそこに地域限定のデザインを盛り込んだ意欲策で全員一致で金賞です。久しぶりに男性が1位になりました。

 

銀賞は2作品

森田修平君の『野尻ミュージックサイト』

野尻湖半に音楽ホールと練習場、宿泊施設を作っています。騒音問題や景観を考慮すると敷地としては最適です。実に魅力的な提案で、我々のイメージがどんどん膨らんできます。そこが問題だったのかも知れません。審査員のイメージが膨らみすぎてしまい、もっともっと魅力的な建築になるのに残念、という思いが勝ってしまいました。指摘された部分をブラシュアップすれば1位の可能性もある作品です。

 

鷺坂研吾君の『Thermal Scape~温熱環境を楽しむエコミュージアム』

環境計画系の学生さんです。風穴を応用した温熱環境を体験する施設の設計です。

意匠系の人間に混ざって善戦しました。建物のデザインに関してはまだまだ甘い部分も見受けられますが、風穴利用という考えは、それを上回る説得力がありました。

 

銅賞も2作品

糸岡未来さんの『抜け道とたまり場~射水市新湊地区内川沿いの空白地に公共空間を点在させる~』

 

地域全体に対象を広げるのではなく、代表的な一箇所に限定してプランとデザインに力を注いだ作品です。実に決め細やかにプランニングされており、大変魅力的な外部空間が出来ていました。残念なのはその魅力を立派な模型がうまく表現できていなかったこと。僕の個人的な印象としてはトラスで組まれた大屋根の質感が、街並みに合っていないように感じました。木製トラスにしたら順位が変わっていたかもしれません。

 

齋藤香奈さんの『ぶどうの杜~苗木からわいんへの道~』

塩尻市にワイン生産の発信施設を作ろうという計画です。

等高線に沿って低く抑えて建物は大変魅力的で最も現実味のある提案でした。ワイン好きとしては大変好感の持てた作品です。

 

7月26日

『JIA関東甲信越支部 委員長・地域サミット合同会議』

恒例の地域サミットと新入会員の紹介、懇親会が開催されました。

長野地域会からは大町の竹内祐一さんが参加してくれました。他の新入会員の大規模作品に混ざり、地域に根ざした密度の高い作品を気後れせず、堂々と発表してくれました。

 

 

 

コーヒーブレイク11

 

『‘92サイトウ・キネン・フェスティバル松本』

1992年9月5日サイトウ・キネン・フェスティバルの幕開けです。

 

天皇皇后両陛下を迎えての杮落とし公演です。この様子はNHKで生中継され、松本市内では大型画面によるパブリックビューイングが行われました。この記念すべき初公演を聴かれたことは一生の思い出になりました。

曲目は

武満徹/セレモニアル(委嘱作品)初公演

チャイコフスキー/弦楽のためのセレナード ハ長調 作品48

ブラームス/交響曲第一番 ハ短調 作品68

 

セレモニアルは武満がこのフェスティバルのために書き下ろした作品で、本邦初公演ですから誰も聞いたことがありません。プログラムには笙:宮田まゆみ と書いてありますので笙が入るようです。武満はノヴェンバー・ステップスという作品をニューヨークフィルの委嘱で作曲しましたが、オーケストラに琵琶と尺八を合わせるという異色の組み合わせで世界をあっと言わせた作曲家です。そんな武満ですから彼を知る人間にとって笙が入ってもあまり違和感がありません。

 

しかし本番は意表をつく演出で聴衆を驚かせました。宮田まゆみが客席の間を笙を吹きながらステージまで歩くというもので、巫女さんが神前まで歩くイメージではないかと僕は解釈しました。聴衆の集中力が一気に高まるのがはっきり感じられるほど効果的な演出だったと思います。曲は西洋楽器で幽玄の世界観を表現したとでもいいましょうか、聞き入ってしまいました。

 

弦楽のためのセレナードはこの後、サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)の十八番となる曲で小澤節全開、思い入れの振幅の激しい名演奏でした。後にも先にもこの日の演奏を超える演奏を聴いた事がありません。SKOが完全に息を合わせるとこうなるんだ、という見本のような超絶演奏でした。

 

ブラームスはまさしく小澤とSKOのコンビのためにあると言いたくなるような超名演。ティンパニーの連打で緊張感が高まり、最後までその緊張感が持続して全曲が閉じられました。鳴り止まぬ拍手がその名演奏の証です。途中の今は亡き潮田さんの独奏バイオリンの美しいこと、本当に心に残る名演奏でした。

 

アンコールはこれも十八番のディベルティメントK.136 通常軽々しく扱われるモーツァルトのこの曲も、SKOだと心に染み渡る奥深い曲に変身してしまいます。

 

 

コンサート終了後、成城学園の先輩とともに楽屋に押しかけ、小澤さんのサインをもらってしまいました。帰りの通路に武満さんがぽつんと立っていましたので、勢いでサインをお願いすると「小澤さんが珍しく漢字でサインしてくれたんだ、じゃあ僕も漢字でサインするね」と快く応じて下さいました。武満さんは残念ながらお亡くなりになられましたので、このサインは僕の宝物です。

 

 

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