ところ変われば

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 長野地域会

ところ変われば

「ところ変われば」(2011.06.14) 安藤政英(安藤建築設計工房)

 

3年前に高校を卒業してすぐフィンランドに留学した息子に会いに行ってきた。

北欧と言えば、アルバーアールトの建築や家具からイッタラやアラビアなどの生活雑記まで北欧デザインというものに触れてこようという目的。次いでにバルト海を渡って、スカンジナビア半島を横断し、世界3大フイヨルドの一つ「ソグネフィヨルド」まで行って見てこようという欲張り弾丸ツアーを計画した。当然そんなツアーは無く、日本からネットで電車から船から宿泊先まで全部予約していった。

 

実際、アールトの建物を見るのはこれが初めてだったが、それよりも北欧自体の空気、陽の光というか北緯が高く1日が長いせいか独特のものを感じた。暗くて寒い冬をくぐり抜けやっと春が来たという活気に満ちた躍動感と明るさを感じた。建物も白を基調にして光りをどう建物の中に取り入れ、外の自然を室内に取れこもうというプランが見て取れる。それに窓にはサッシなんてものは使ってない!基本的に木製の大きな押し出し窓とか内倒しになっている。氷点下20度は当たり前の世界でも木に対する愛着は並々ならぬものがある。

 

テンペリアウッキオ教会の岩盤の壁などは息子の通っている大学の講義室も同じで自然の岩盤の壁を見せた意匠となっている。「自然と建築をいかに近づけるか、」どこもそれを感じる街並みだった。

 

バルト海を渡る巨大な客船は貧乏旅行なため船倉の一番下の階の窓無の2段ベッド。(笑)でもちゃんとトイレシャワー付。着いたストックホルムは北欧最大の都市だけあってすごい人だかりだった。古い町並みのあるガルムスタンだけ見てさっさとあとにした。

オスロから乗ったベルゲン急行は国境を挟み、野山を超え、荒涼たる高地をただひたすら走り大自然の驚異を味あわせてくれた。

 

大急ぎの一週間だったが、一番驚いたのは物価の高さ。昼飯にバーガーショップで食べたハンバーガーとビールが二人で50ユーロ。食べながらゆっくり計算したらなんと5500えーーーーーん。ありえへーーーん。信じられなくてレシートをみてもしっかり消費税25%も取られている。それでもやっぱり高い。こんな物価の高い国でもОECDの幸福度調査ではスエーデン、ノルウェー、フィンランドなど北欧の国々は上位を占めている。幸福度はお金の有る無しではないとわかっているけど、やはり国のシステム自体から違っては比べようもない。

でも、みんなが老後や仕事など将来への不安もなく家族が一緒に幸せ暮らせる世の中を作っていくというのはいまを生きる我々の責任-そんなことを感じながら、横には「なんだよ!おやじ英語全然だめじゃん」という息子の冷ややかなの視線を感じた1週間だった。

 

 

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